世界中の経済に大きな影を落とした新型コロナウイルス。2020年も後半戦を迎えながらも、収束する気配を微塵(みじん)も見せない。大手IT企業は自社ソリューションを期間限定で無償提供するなど経済支援を続けているが、Microsoftは米国時間2020年6月30日、デジタルイベントを開催し、世界中の2500万人を対象にデジタルスキルの取得を支援する「Global Skill Initiative」プログラムを発表した。
世界で1000万人以上が罹患(りかん)した新型コロナウイルスの世界的大流行は我々の生活を大きく変えた。人々が集まるイベントやコンサートは開催を見送り、飲食店は休業を強いられ、リモートワーク環境を整備していない企業、もしくは対面営業を前提とする業種は輪番出社や自宅勤務で世界的大流行を乗り越えようとしている。だが、総務省が2020年6月30日に更新した統計情報によれば2020年5月の有効求人倍率は1.2倍。オイルショック以来の下げ幅を見せたように、以前のように人々がオフィスに集い、業務を遂行するような社会は帰ってこないだろう。Microsoftが示したデータによれば、2020年の世界的失業率は2億5000万人に達する可能性が高い。
そのMicrosoftは、失業で苦しむ人々に必要なのはデジタルスキルであると提言する。同社は「経済回復を促進するために必要なステップは、新しい仕事を得るために必要なデジタルスキル」(同社President, Brad Smith氏)の取得だと述べつつ、データ活用能力を取得するための学習機会やコンテンツの無償提供、認定プログラムの安価提供、無償の求職ツールを自社やGitHub、LinkedInのリソースを組み合わせて2020年末まで提供することを明らかにした。
具体的にはLinkedInラーニング、Microsoft Learn、GitHub Learning Labの無償アクセスに加えて、マイクロソフト認定資格とLinkedInの求職ツールを活用する。さらに世界中の非営利団体に2000万ドルの現金を助成金として用意し、各国政府にもデータ分析基盤を提供することを表明した。たとえばマイクロソフト認定資格試験は新型コロナウイルスの影響を受けていることを自身が表明すれば15ドルで受講できる(通常は100ドル以上)。希望者は9月から年末までに受講を表明し、2021年3月31日までに試験を終えなければならない。
Microsoftは本プログラムのアプローチとして、「データや技術を活用した能力開発の支援」「幅広いスキルへの焦点」「雇用者の可能性」「非営利団体とのパートナーシップと政府支援」「自社リソースの集結」「データと知識共有を背景にした公共政策の革新」と6つ要素を提示する。同社は社会貢献活動に注力するため、2015年12月にMicrosoft Philanthropiesを設立し、被災地支援やコンピュートリソースの寄贈を行ってきた。直近では日本マイクロソフトが、2016年4月に発生した熊本地震からの復興を目指す熊本市の「クラウドソリューションを活用した働き方改革基盤構築プロジェクト」と連携したことを思い出せる。我々がデジタルの力で社会を変えてきたように、本プログラムが新型コロナウイルスの困窮者を救う一助になることを祈りたい。
阿久津良和(Cactus)