群馬パース大学は6月17日、喘息治療薬の一種である「シクレソニド」の新型コロナウイルス増殖抑制機構を分子レベルで明らかにしたと発表した。

同成果は、同大大学院 木村博一教授の研究チームと、杏林大学医学部、群馬大学医学部、国立感染症研究所、北里大学大村智記念研究所ならびに横浜市立大学医学部の共同研究グループによるもの。詳細はアレルギー・臨床免疫学の専門誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載された。

先行研究によると、シクレソニドは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、培養細胞を用いた実験より、新型コロナウイルスのゲノム複製を抑制するということを報告していたが、その詳細は不明であった。今回、研究グループは、新型コロナウイルスのゲノム複製に関与するウイルスタンパク質とシクレソニドとの相互作用を先端バイオインフォマティクス技術ならびに高性能コンピューターを駆使したドッキングシミュレーションという手法を用いて、分子レベルで抗ウイルス効果の解明に挑んだという。

その結果、シクレソニドは、新型コロナウイルスゲノム複製酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼ)には作用しなかったものの、複製の際に生じた変異を修正する酵素(NSP15エンドヌクレアーゼ)の活性中心と結合し、ウイルスゲノムの正確な複製を阻害することを明らかにしたという。

これらの結果について研究グループは、シクレソニドの分子レベルでの新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用のメカニズム解明に貢献するだけでなく、今後の新しい抗ウイルス薬の設計などの創薬にも役立つ情報として期待されると説明しているが、今回の知見を活用するためには、今後、実際のタンパク質を用いて検証を行う必要があるともしている。