ALEは4月20日、同社の人工流れ星衛星2号機「ALE-2」に不具合が発生し、流星源(流れ星の素となる粒)の放出が不可能な状況になっていることを明らかにした。同社は2号機による人工流れ星の実現を断念。当初、2020年春にも人工流れ星のサービスを開始する予定だったが、3号機打ち上げ後の2023年初期まで遅れる見通しとなった。

  • ALE

    人工流れ星衛星2号機「ALE-2」のモックアップ

2号機は、Rocket LabのElectronロケットにより、2019年12月6日、ニュージーランドから打ち上げられた。これまで順調に運用を続けていたが、流星源を装填(格納庫から放出機構へ送る)するコマンドを送信しても、動作しないことが判明。詳細な検証の結果、部品の1つが動きにくくなり、所定位置に戻らなくなっていることが分かったという。

宇宙空間のような真空状態では、摩擦力が増加したり、素材同士が固着しやすいことが知られている。これを想定し、動作するのに必要な力を出せるよう設計していたが、同社の検証によれば、この真空による影響が予想よりも大きく、力が不足している可能性が高いという結論に至ったという。

  • ALE
  • ALE
  • 放出装置の試作機。根元の太い円筒の中に、格納庫と放出機構がある

2号機によるサービス開始を断念したことで、初の人工流れ星は、もともと計画があった3号機で実現することになった。今回発生した不具合への対策として、3号機では、従来よりも高真空な状態を再現できる機器を導入し、より詳細な検証が可能となったほか、機械・電気・ソフトウェアなど各分野のエキスパートを増員したそうだ。

現時点での3号機の開発スケジュールは以下の通り。

  • 2021年内 エンジニアリングモデル(EM)が完成
  • 2022年中期 フライトモデル(FM)が完成
  • 2022年後期 打ち上げ
  • 2023年初期 商用運用開始

同社代表取締役社長/CEOの岡島礼奈氏は、コメントで「明るい話題が少ない時だからこそ、みんなで家から見える流れ星を実現したかった」と、悔しさを見せた。ただ、「私達ALEの人工流れ星への情熱は変わっておりません。得られたナレッジを3号機の開発に活かし、次回は必ず成功させます」と意気込んだ。

なお2号機による人工流れ星は実現できなくなったものの、軌道上には、2019年1月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット4号機で打ち上げた初号機がある。初号機は計画通り、高度500kmの軌道に投入。高度400kmを飛行する国際宇宙ステーションへの安全性確保のため、現在、高度を下げる運用を行っているところだ。

初号機は、同年12月25日に、空気抵抗を増やして高度を下げるための膜を展開、降下速度が加速したことが確認されている。1年程度をかけ、高度が400km程度まで下がれば、ようやく流星源の放出が可能になるのだが、降下速度は太陽活動の状況によって大きく変わる可能性があり、正確な時期は予想しづらい。

この降下期間は「数カ月~半年ほども前後する可能性がある」(同社)とのことで、バラツキが大きすぎるため、正式な運用として見込んでいないそうだ。ただ、初号機の放出装置も2号機と同様のため、同じ不具合が発生する可能性もあるものの、もし順調に降下すれば、初号機で最初に人工流れ星が実現する可能性もあるということだ。