日本IBMは2月7日、都内で記者会見を開き、企業におけるAI活用支援に向けた新体制として「IBM AI センター」を設置したと発表した。
AI センターは昨年12月に発足し、1月から社内で準備を整え、2月から本格的に始動した。同センターにおけるミッションは「お客さまをさらなるAI活用の未来に導く(企業全体での信頼できるAIの本格活用)」、活動は「業界ナレッジ、技術・サービスを活用し、それぞれのお客さまに適したJourney to AI(AI活用への道筋)」を描き推進する」、体制は「データとAI技術の理解があり、お客さまのJournyをリードできる人材を部分横断的に結集」としている。
日本IBM 常務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長の伊藤昇氏は、同社が考えるAIについて「Watsonのイメージが強いが、すべてのソフトウェア、ハードウェアに加え、AIを推進するためのサービスメニューをはじめ、全体を含めて当社は企業に向けてAIを推進し、これにより企業のDXに貢献していくこと、と定義している」と話す。
また、日本IBM 技術理事 IBM AI センター長 データサイエンティスト・プロフェッションリーダー 工学博士の山田敦氏は「これまでのノウハウや経験などを集約し『Journeyの基本形』として整理した。データ×AIガバナンス、AI、データ、データ基盤、デジタル人材の5つの階層に分類し、この基本形を各顧客に対して具体化することがAI センターの役割だ」と説明した。
その上で同氏は「1つのAIは多くのデータが必要であり、1つのデータは多くのAIから使われないと存在理由が問われ、AIまたはデータどちらか一方を育てることは難しく、どのように循環させて育てていくかが企業全体にAIを広げていくためのエッセンスになる。また、AIは運用していくと性能が劣化するため、ライフサイクル全体をサポートするデータ基盤の要望が高まっていることに加え、多くの企業が組織全体でデータを活用する文化の醸成を求めている。そのため、個別の顧客に対して迅速に製品・ソリューションを組み上げて提案することが肝要だ」と述べた。
これらの状況を鑑みて、同社では約150の製品やソリューション、コンサルティングサービスなどを準備しており、データ活用の戦略策定や基本アーキテクチャ策定などを担う「全体構想」、デザインシンキングを取り入れてアジャイルにAIを構築する「AI構築(業務・業種別)」、データガバナンスの計画策定をはじめとした「データ整備」、企業・組織がデータから得た洞察を簡素化・自動化し、オープンで拡張可能なアーキテクチャを提供するCloud Pak for Dataといった「データ基盤・分析環境構築」、データ活用企業文化の育成などの「デジタル人材育成」で支援するという。
AI センターの人員は戦略・業界コンサルタントやデータサイエンティスト、AI製品/ソリューションスペシャリスト、AI開発者などとなり、社内のサービス事業部、製品事業部、研究開発部門の人材が兼任する形となる。
加えて、昨年出願したAI関連の特許1800件(全体では9000件)を誇る「幅広い研究領域とリーダーシップ」、Red Hatとの戦略商品であるCloud Pak for Dataなどの「次世代プラットフォーム」、米Sprintをはじめとした「成功企業への導入経験」、世界中のデータサイエンティストや機械学習エンジニアなど30人でチームを組成している「グローバル・エリート・プログラム」により、企業のプロジェクト支援に取り組むことをアピールしている。
そして、伊藤氏は「Watsonの発表以降、コールセンターやチャットボットなどの事例はあるものの、昨今では企業において部門ごと、もしくは特定の業務にAIを使うことではなく、企業全体でどのようにAIを活用し、企業の成長に寄与していくのかというチャレンジのフェーズに突入した。しかし、データ活用への投資やAIを重要な戦略と考えているが、データドリブン型の企業経営に移行し、新規ビジネスを創出するなど、次の段階におけるAIの活用に関しては、多くの企業はまだ道半ばの状態であり、課題感を感じている。そのため、われわれはAIをどのように活用し、企業変革していくのかAI センターを通じて支援する」と強調していた。