DellとEMCの歴史的大型統合から3年、これまで日本ではデルとEMCジャパンと2つの法人で運営してきたが、2019年8月にEMCジャパンの代表取締役社長の大塚俊彦氏がデルの代表取締役社長も兼任することになり、統合に向けた一歩となった。川崎と新宿にあるそれぞれの本社オフィスも、2021年下半期に1箇所に集約する計画だ。そこで、2社統合の進捗と2020年の戦略を大塚社長に聞いた。
2018度は、コンバージドインフラ(CI)、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)が牽引して国内で20%以上の成長を遂げました。2019年度のビジネス状況について教えてください。
大塚氏:引き続き堅調に推移をしています。ただ、成長よりも内容が重要だと思っています。昨年以上にデジタル変革、ITの最新鋭化のご支援をさせていただき、これが大きな加速要因となっています。そして、日本企業のデジタル変革が、構想の段階から実装に進み始めている点も重要です。われわれはこれを”Realize”(=実現する)と称しており、その橋渡しの支援を実践的なアプローチで行っています。
製品カテゴリとしては、CI(コンバージドインフラ)、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)は引き続き成長しています。2019年に発表したオールフラッシュの「Dell EMC PowerMax」なども採用が進んでいます。デジタル変革において、膨大なデータをどのように効率的に活用するのかは欠かせません。データレイク構築についても市場から高い需要があります。PCでは、「Windows 7」サポート終了ということもあり、需要が堅調に推移しています。
国内でもデジタル変革が本格化してきているとのことですが、デジタル変革を含むIT市場について、どのような見通しを立てていますか?
大塚氏:Dell Technologiesグループは2年に一度、デジタルトランスフォーメーションに関する意識調査を行っています。最新の結果(2018年秋発表)では、デジタル技術が企業の文化に根付いており、戦略的で中心的役割を果たしている「デジタルリーダー」は、日本ではわずか2%、グローバルでも5%にとどまっています。
「デジタルリーダー」を5として、デジタル化について検討すら進んでいない「デジタル後進企業」を1とする5段階評価で見ると、日本の企業の多くは3、2、1に集中しています。欧米より少し遅れていますが、経営トップの皆様とお話させていただくと、確実に前進していると感じます。
日本市場のデジタル変革で特徴はありますか?
大塚氏:日本でデジタル変革を加速する潮流が5つあります。
1)生産性に関連した課題、2)経済産業省が出した「2025年の崖」レポートと公共分野のデジタル化の推進、3)自動運転、4)キャッシュレス、5)5G、です。
例えば3)の自動運転は、自動車メーカー、製造業だけが関係しているのではなく、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)として、さまざまなサービス産業が関与することになります。4)は日本が遅れていると言われている分野です。オリンピックを控えていることもあり、ユーザーに対する優れたサービスという視点でさまざまな提携が進んでいます。
この5つのトレンドがデジタル変革と同時平行で進んでいるというのは、日本市場の大きな特徴です。これにもう一つ、さまざまなクラウドを活用する「マルチクラウド」が加わります。
Dell Technologiesグループとしても、日本の動きに注目しています。先にCEOのMichael Dell(マイケル・デル)が来日しましたが、CTOのJohn Roese(ジョン・ローズ)は年2回のぺースで日本に来ています。日本企業が持つ越したテクノロジー、製品開発、きめ細かなサービス、現場能力の高さ、優秀な人材などを考慮すると、デジタル変革が今後大きく加速する可能性があり、米国本社としても日本におけるデジタル変革の動向に期待しており、投資をしていくという方針です。
デジタル変革で実践的なアプローチで支援するとのことですが、具体的に教えていただけますか?
大塚氏:われわれはこれまで一貫して、お客様の状況に合わせてデジタル変革を実現するために実践的なお手伝いをすることを続けてきました。実践的とは、階段を上がっていくーーつまり、目標にたどり着くための有効なステップを経ていくことです。
そこで、デジタルで先進するリーダー企業に向けて、次の4つの変革を実践的にやっていこうと提唱しています。
1)既存のITインフラをデジタル対応に、クラウド対応する「ITトランスフォーメーション」
2)データドリブン時代のアプリケーション開発や既存アプリケーションの移行を含む「アプリケーションのトランスフォーメーション」
3)デジタル時代の人材育成や生産性向上のための「働き方改革」
4)「セキュリティ」
これを全体として支えるために、上流ではコンサルも強化しています。まずは企業の複雑な現状をさまざまな形で見える化して、To Beモデルを作ります。その際に、業務だったりサービスレベルといった要件があり、それを仕分けしながら最適なTo Beモデルを見出します。パブリッククラウドを徹底活用するところもあれば、プライベートクラウドを活用した方がいいところもあります。エッジでの展開が必要なところもあるでしょう。実践的なアプローチで、次世代のアーキテクチャをお客様と一緒に構築します。
このような流れで、2018年に国内100件、グローバル1000件以上のデジタル変革を支援いたしました。2020年もこれをいっそう強化していきたいと考えています。