事業が成長する中でExcelベースの顧客管理がネックに

ソーシャルメディアに特化した広告やコンサルティング事業を展開しているトーチライト。同社はソーシャルメディアのエージェンシーとして、Twitter、Facebook、Instagram、LINEをはじめとした3000社以上のソーシャルメディア広告キャンペーンの運用実績を誇っている。

なかでもTwitterやFacebook、Instagram、LINEに関しては、同社はオフィシャルパートナーに認定されており、Facebook広告運用ツール「Sherpa」も開発している。最近では、コンサルティング事業も拡大中で、大企業から中小企業までの幅広い実績を誇る。

このように事業が成長を続ける中、同社ではいつしかExcelベースで行っていた顧客管理が課題となってきた。顧客情報はメンテナンスされておらず、いつ作成された情報か、そもそも誰がとってきた情報なのかもわからない状態だったのだ。

トーチライト マーケティング部 コーポレートマーケティングディレクター/リーダーの松井邦夫氏はこう振り返る。「クラウド名刺管理サービスを取り入れたことで、ある程度は情報を追えるようになったものの、その顧客とどのような話をしたのかなどまでは管理できないでいました。そこまでわからなければ、100社のコンタクト情報を持っていたとしても十分に生かすことができません。であれば、CRMシステムを導入して、それを可能にしようと考えました」

  • トーチライト マーケティング部 コーポレートマーケティングディレクター/リーダー 松井邦夫氏

あわせて、営業のステータス管理もCRMによる実現が目指された。どのビジネスがどこまで話が進んでいるのか、次の売上にどれぐらい役立ちそうな仕込み案件があるのかなど、営業のステータス管理もまたExcelで行われていたため、顧客管理と同様の課題を抱えていたからだ。

営業支援ツールとして活用の幅を広げる

さまざまな角度から選定を行った結果、トーチライトではZohoのクラウド型CRMサービスの導入を決定した。CRM製品/サービスを選定するにあたって最も重視したのはコストだった。

松井氏は言う。「関連会社でSalesforceを利用しているのですが、今の当社の企業規模で導入すると、Zohoの4倍以上のコストになるという試算になりました」

2番目の選定理由として、同氏が挙げるのがカスタマイズ性の高さであり、3番目はやはり規模との相性だった。

「われわれのような中小企業がエンタープライズ向けのサービスを扱うのは大変だろうと考えました。自分たちのビジネスの規模で最適に使えそうなサービスということから、最終的にZohoの導入を決めました」(松井氏)

2017年の5月から利用をスタート、最初はSFAとしての利用が中心であり、顧客のアカウント情報管理や営業のステータス管理を行っていた。その後9月からは、請求書の処理もZoho上で行うようになる。それまでは請求書もExcelで作成していたが、一件一件フォームに入力して作成する作業が営業担当者にとって負担となっていたのである。そこで、Zohoの請求書機能に着眼し、同年10月からは請求書もZohoから発行できるようにした。

「Zohoはカスタマイズしやすいのが特徴なので、イベントやユーザー会などに参加してレクチャーを受けて、自分で踏み込んだカスタマイズまでできるようになっていきました」

トーチライト専用MAシステムの構築を

松井氏はいったんZohoに関する仕事から離れていたが、Zoho CRMから40以上のエンタープライズ・クラウドアプリケーションが利用できるZoho Oneへとライセンスをアップグレードしたのに伴い、トーチライトのビジネスに合わせて再設計を行うべく、Zohoに再び携わるようになる。

「少し大げさに言えば、当社専用のMA(マーケティング・オートメーション)システムの構築を目指しています。Zohoはさまざまなアプリケーションを組み合わせることができるので、トータルでMAになるようにと設計をしているところです。営業担当者のタスク管理は既にZohoプロジェクトを使っています。営業に関するメインの業務はできる限りZohoで完結できるようにし、なるべく他のシステムを絡めないようにしたいと考えています。社員も、Zoho Oneでいろいろなことができることがわかったので、『こんなこともできないか』と問い合わせが来るようになり、社内のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を促す効果も出ていますね」と松井氏は話す。

今後の展開としては、営業活動に伴う情報がある程度集約された段階で、アナリティクスダッシュボードを用意することを目指していくという。経営者がいちいち営業担当者に聞かなくても、来月の売上の見込みや現在のビジネスの状況が俯瞰できるようにするためだ。

「ダッシュボードも上層部向けだけではなく、担当者向けもつくりたいですね。例えば、あらかじめ売上目標を設定しておけば、あといくら足りないなどリアルタイムに把握できるようにすれば、効率的な営業活動につながるはずです。現状、営業担当者にとっての恩恵は、請求書の発行が楽になった程度にとどまっています。担当者にはシステムに情報をインプットしてもらっているので、それに見合うようなアウトプットも提供したいのです」と松井氏。

例えば、顧客がZohoデスクにチケットを切ると、その営業担当者にアラートで知らせること、ある顧客を獲得したら、過去の顧客データから似たような顧客を洗い出して、横展開のためのアタックリストを自動生成することを実現したいという話も営業担当者とのヒアリングから出てきているそうだ。

採用業務も別のシステムで管理しているが、Zoho Oneのリクルートアプリへの移行を検討中だ。「そうすればリクルートに関するステータス管理ができるようになります。現在、HR部門と移行の話を進めています」(松井氏)

現在は、利用拡大に向けた設計を進めている段階だが、そのカバーするアプリケーションの種類の多さから、トーチライトでは営業関連に限らずさらに広い業務をZoho One上に集約していく構えだ。