高山商事とテムザックは11月18日、共同開発した自動駆け付け介護ロボット「SOWAN」(ソワン)を発表した。介護施設での使用を想定した自律走行型のロボットで、夜間の巡回などを行い、職員の負担を軽減することができるという。月額6万6000円(税別)からという、導入コストの安さも大きな特徴だ。

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    高山商事の高山堅次代表取締役と「SOWAN」(ソワン)

高山商事は、介護関連の事業を行うために、2010年に設立された。同社の高山堅次 代表取締役は、現在の介護業界の大きな問題として、「人手不足」をあげる。2000年に介護保険制度が始まり、各業界からの新規参入も相次いだが、「介護保険料の低下などにより、収益の悪化が見られる状況」(高山氏)だという。

人手不足の背景には、この厳しい経営状況がある。給料を上げられないから、人が増えない。人手が足らないから職員の負担が大きくなり、離職が増えた結果として、さらに人手不足が悪化する。まさに悪循環だ。今後、少子高齢化がさらに進行すれば、人材確保はこれまで以上に難しくなることが予想される。

高山氏は、離職が止まらない現状について、「業務のストレスが原因」との見方を示す。介護は日常生活をサポートする仕事のため、日中だけでなく、夜間の見守りなどもあるが、「ナースコールが押されて駆けつけると、呼んでないよと言われることもある」という。緊張感の中でこういうことが続けば、誰だって疲れてしまう。

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    日本全体で人手不足は深刻化しているが、介護業界でも大きな問題に

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    介護業界を取り巻く問題。24時間体制なので、負担が大きくなってしまう

そこで同社は、ロボットの導入を検討。テムザックにアプローチして、共同開発をスタートさせた。「人手で無くても良い業務」は何かを考えたところ、「巡回・見守りなら良いのでは」という結論になったという。ロボットの導入により、職員の負担を軽減できるほか、コストの削減も期待できる。

SOWANで主に想定されているのは、職員の負担が特に大きい夜間の巡回業務だ。SOWANは、導入時に一度施設内を巡回させることで、マップを自動作成。その後は、自動で巡回することができる。居室の引き戸には、自動開閉装置「ポルテア」を設置しておき、SOWANが指示を出すことで、自動的に開閉する仕組みだ。

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    搭載したLIDARにより周囲を計測。作成したマップで自動巡回する

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    SOWANは自動開閉装置「ポルテア」と通信して、室内に移動できる

活動量計との連携も可能。入居者の手首に装着した活動量計により、心拍数を常時モニター、設定した値を超えるとアラートを出し、SOWANが自動で駆けつける。職員は管理室から、SOWANの映像を見ながら、SOWANを通じて声をかけることもできる。

室内にカメラとマイクを設置しても同様のことはできるが、それだと「監視」になってしまう。ロボットであれば、駆けつけたときのみ撮影することが明確なため、監視にはならず、入居者のストレスを下げられるメリットがあるという。

オプションとして、顔認識機能も用意。巡回中に、認知症による一人歩き行動がある入居者を見つけたときには、部屋に戻ってもらうよう声をかける。転倒者を見つけたら通報する機能や、自動充電の機能も、オプションとして提供する。

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    入居者の顔を認識して、声かけを行う。文言は時間帯ごとに設定できる

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    自動充電の機能を使えば、24時間連続して、自動巡回することが可能だ

SOWANの外観は2種類を用意した。タイプIは女性型の外観だが、夜間の巡回で気味が悪いという場合には、無機質なタイプIIを選ぶこともできる。違うのは外観だけで、機能はどちらも同じ。

SOWANの身長は136.5cm(タイプI)/136.0cm(タイプII)、重量は約60kg。センサーとしては、全方位LIDARを搭載しており、これでマッピングや衝突回避を行う。約7時間の充電で、約20時間の稼働が可能。夜間のみの運用なら途中の充電は不要だが、自動充電機能を付ければ、昼間も継続的に利用することができる。

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    頭部にはカメラを搭載。これで顔認識と、駆けつけ時の撮影を行う

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    本体の足元に、LIDARを搭載している。これで全方位の距離が見える

基本プランには、自動巡回、活動量計、自動駆けつけ、自動引き戸開閉などの機能が含まれ、リース料は月額6万6000円(税別)。これは"時給"で計算すると、わずか88円という安さだ(66000÷24時間÷31日で計算した場合)。高山氏は、「時給88円という低コストがコンセプト。シンプルなので誰でも使える。介護業界の救世主になる」とアピールする。

基本プランのセット内容としては、SOWAN本体、制御PCのほか、ポルテア×10台、活動量計/タブレット端末×10セット、管理用スマートフォン、活動量表示PCなどが含まれる。なおオプションとしては、顔認識・声かけ、自動充電、転倒者検知・通報などの機能があり、全てを付けたときの月額は14万5000円程度になる予定とのこと。

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    基本プランのセット内容。このほか施設内に無線LAN環境が必要になる

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    ロボットの時給は88円。最低賃金の10分の1という安さをアピールする

高山商事のWebサイトで同日より受付を開始しており、2020年6月に、初回分の100台を納入する計画。同社はSOWANで3,000台の販売を見込んでいる。