セゾン情報システムズ 内田和弘氏

セゾン情報システムズは11月7日、記者説明会を開催し、代表取締役社長の内田和弘氏が同社が注力している「リンケージサービス」について説明するとともに、同日発表したファイル連携ミドルウェア「HULFT」の新機能「クラウドストレージオプション」を紹介した。同機能は、12月4日より提供が開始される予定。

内田氏は、同社のビジョン「カテゴリートップの具現」について、「世の中にはさまざまなジャンルのIT製品が存在するが、当社の価値を考えた時、HULFTとDataSpiderが浮かび上がった。いずれもマーケットの中で存在感を持っている。そこで、この2製品によって、特定の分野でダントツの存在感を発揮することを目指すことにした」と説明した。

「HULFT」「DataSpider」はいずれもデータ連携に関わる製品だ。内田氏は、中期経営計画については、「データをつなぐことにおける強みを生かすため、中期経営計画のテーマは『Link the Gap』とした。ギャップをつないでいくことで、新たな価値を生むことができる。具体的な戦略については、既存事業の生産性を向上し、そこで浮いた人材とコストを新規事業に振り向ける」と語った。

「データのつなぎ」を強みとする同社は、データ連携ソフトウェアを中核に、顧客のシステムとデータをつないで分析を容易にすることで、顧客の意思決定を支援し、経営刷新をつなげるサービスとして、「リンケージ・ビジネス」に力を入れている。

  • 「リンケージ・ビジネス」の概要

リンケージ・ビジネスは、まず自社で対象の製品を導入して、運用のノウハウを蓄積し、それをもとにパートナーと導入サービスを開発するといった流れで展開されている。

現在、リンケージ・ビジネスの一環として、経営のデジタル化においてBIツール「Tableau」を、経費精算においてConcurを活用しており、「自社で製品を利用することで、課題がわかる。その課題を解決する上で、ノウハウを蓄積し、サービスをつくっていく」と内田氏は語っていた。

  • 「リンケージ・ビジネス」の仕組み

セゾン情報システムズ HULFT事業部長 山本善久氏

「リンケージ・ビジネス」は「モダン・マネジメントサービス」と「モダン・ファイナンスサービス」に分かれており、「Tableau」は前者のサービス、Concurは後者のサービスとして提供されている。さらに、モダン・マネジメントサービスについては、人事・財務向けクラウドサービス「Workday」を、モダン・ファイナンスサービスについては、財務・資金管理ソリューション「Kryiba」を検討しているという。

「HULFT」については、取締役 HULFT事業部長の山本善久氏が説明を行った。同氏は、「HULFT」のビジョンについて、以下のように語った。

「現在、データを活用する人がデータサイエンティストやIT担当者に加えて、現場のビジネスユーザーにまで広がっている。そのため、データ連携においては、自動化、モダナイゼーション、データ・インテリジェンスの3点が求められる。HULFTは、この3点を実現する機能を提供する」

自動化においては、データ連携にまつわる手作業を解消し、コストを削減する。モダナイゼーションでは、基幹システムのデータも活用できるよう、複数のシステムをつないでいく。データ・インテリジェンスでは、誰もが必要なデータが格納されている場所がわかるよう、データの可視化を行う。

  • 「HULFT」のビジョン

加えて、山本氏は「HULFT」を製品展開していく際のコンセプトとして「Data Management Solution」を紹介した。「Data Management Solution」はデータを活用するための「Data Entry」「Data Identification」「Data Integration」「Data Quality」「Data Prep」という5つの機能に分かれている。

  • 「HULFT」の製品展開のコンセプト

「Data Entry」と「Data Integration」に関しては、既に「HULFT」と「DataSpider」が機能を提供している。「Data Identification」は「Data Catalog」が機能を提供し、「Data Quality」「Data Prep」については新たな製品を解発するという。さらに、「5つの機能を一気通貫で使うことを可能にするための基盤も用意したい」と、山本氏は述べた。

同日、発表された「HULF」の新機能「クラウドストレージオプション」は、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platformへのデータ連携を実現するものだ。

通常、オンプレミスのシステムとクラウドストレージを連携する場合、双方の技術に詳しいエンジニアが必要になることがあったが、同機能を利用すれば、煩雑な設定を行わなくても、「HULF」の設定画面から上記のクラウドストレージにデータを転送することが可能になる。

同社で「クラウドストレージオプション」を利用して、災害復旧用のバックアップストレージをAmazon S3に移行したところ、コストを42%削減できたという。

クラウドストレージオプションのライセンス料金は30万円、保守費用は通常保守が年額4万5000円、24時間365日保守が9万円(いずれも税別)。サブスクリプションの場合、月額料金は1万2800円(通常保守)または1万6500円(24時間365日保守)。

今回のリリースでは、オブジェクトストレージへのアップロードのみの対応となっており、ダウンロード機能など他の機能は、今後のバージョンアップで対応を予定している。