富士通は10月9日、同社のAI(人工知能)技術である「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」(Zinrai)を使用し、東京都練馬区と住民税額の確認や修正を行う住民税賦課業務において業務の効率化やベテラン職員のノウハウ継承を目指す共同実証を同日から2020年7月末までの予定で開始した。同社によると、住民税業務へのAI適用は業界初だという。

  • 職員の手作業を軽減するAIの3つの機能

    職員の手作業を軽減するAIの3つの機能

同区は、住民や事業所などが申告する確定申告書や給与支払報告書、年金支払報告書などの多様な課税書類を同社の自治体向け税業務システムである「FUJITSU 公共ソリューション MICJET」(MICJET)で管理している。

これらの書類は同システム上で照合し、住民税額の不整合がある場合はエラー検出する。エラー数は例年7万件を超え、職員が手作業でエラー内容を確認し、適宜修正対応しており、作業の負荷やノウハウの継承が課題になっていたという。

今回の実証では、MICJETで給与支払報告書や確定申告書、住民税申告書などを照合しエラー検出した住民税額の不整合を、職員が確認して適宜修正する作業において、エラー原因と修正要否の判断基準などをデータ化することでAIに学習させる。

その学習データを基に住民税額の修正の要否や見直すべき資料の提示、住民税額の自動修正を行うAI学習モデルを構築して、同区の住民税賦課業務に適用し、業務効率化やベテラン職員のノウハウ継承における有効性を共同で検証する。

さらに、AI学習モデルに入力の不整合を引き起こす思考プロセスをデータ項目と内容の相関から類推し修正ロジックを生成する、富士通研究所が開発したマイニング技術を適用することで、住民税額の自動修正範囲を拡大し、賦課業務を効率化することを目指す。

なお、富士通では今回の実証実験で構築したAI学習モデルを基に新ソリューションを開発し、2020年度中にMICJETのラインナップに追加して提供する予定だ。