日本IBMは9月13日、都内で記者会見を開き、ハイブリッドマルチクラウド環境全体で顧客データのプライバシーを管理する機能を備えた新たなメインフレーム「IBM z15」、Linux対応の「IBM LinuxONE III」に加え、Power 9プロセッサ搭載のストレージシステム「DS8900F」を発表した。
冒頭、日本IBM 常務執行役員 システム事業本部長の朝海孝氏は新製品群について「オープンハイブリッドマルチクラウドに対応するための戦略製品だ。クラウドネイティブな開発をサポートし、あらゆる場所で暗号化を行い、ゼロダウンタイムと計画停止時間を極小化する高速起動を可能にする」と説明した。
クラウドネイティブな開発をサポートする点については、従来の固有のサイズ・電源仕様、専用フレーム、上げ底ケーブルからクラウドデータセンター標準の19インチラックとし、Red Hat OpenShiftや統合済みのコンテナ化したソフトウェアとして提供する「IBM Cloud Paks」に対応。
ゼロダウンタイムと計画停止時間の極小化では、システムに内蔵されている全プロセッサをシャットダウンおよび再起動時に活性化させて、システム停止や起動時間を短縮する「System Recovery Boost」により、ソフトウェアや保守などのコスト増なしでSLAを達成するという。
暗号化に関してはz14から引き継ぐ、すべてのデータを暗号化する全方位型暗号化技術に加え、顧客がデータを保存、共有する際の制御を可能とする「Data Privacy Passports」を搭載。同機能はオンプレミスのデータだけでなく、プライベート、パブリック、ハイブリッドにわたり、全社的なデータプライバシーポリシーを適用でき、IBM Z内だけでなく、外部にコピーされたデータの制御・保護を可能としている。
ストレージシステムであるDS8900Fはデータ保護の強化、連続稼働性、クラウド連携の機能強化しており、z15との併用でより堅牢なシステムになるという。
出荷開始はz15とLinuxONE IIIは9月24日、DS8900Fは11月15日に予定している。
「3+1」の進捗
一方、日本IBM 代表取締役社長 執行役員の山口明夫氏は先日の「Think Summit」で発表したデジタルトランスフォーメーションを支援する「3+1」の進捗状況について説明した。3+1とは「デジタル変革の推進」「先進テクノロジーによる新規ビジネスの共創」「IT・AI人材の育成」、データとAIに関する「信頼性と透明性の確保」で企業を支援する同社の取り組みだ。
デジタル変革の推進では、Red Hatの買収完了に伴う連携の強化、Cloud Paksを発表している。新規ビジネスの共創では東京大学と社会モデルの創出による産学連携、同大とテラスカイ、GRIDのIBM Qへの参画に加え、人材育成に関しては学生向けAI講座、プログラミングコンテストの開催、全社員向けのCloud開発/データサイエンティスト研修を挙げていた。
そして、信頼性と透明性の確保については政府理念であるDFFT(データの自由流通)の支援、AIの可視化を実現するためのWatson OpenScaleの展開に取り組んでいるという。