ソフトバンク、博報堂、英Armは9月5日、都内で記者会見を開き、データ活用による企業の変革を支援する合弁会社「インキュデータ株式会社」を設立したと発表した。新会社の資本金は20億円(出資比率は非公開)、10月1日から事業の開始を予定している。

新会社は、データ活用の戦略立案から、各種施策を実行するためのデータ活用や分析基盤の構築・運用、コンサルティングまで、データを活用して変革しようとする顧客企業をワンストップで支援し、競争力の強化に貢献することを目的に設立。

  • インキュデータのミッション

    インキュデータのミッション

近年、AI(人工知能)技術やIoTが急速に普及し、企業活動においてデータ活用の重要性が高まる一方、活用すべきデータの部門間でのサイロ化、データ活用の戦略を立案・実行できる人材の不足などが課題となっている。結果として、売り上げの向上などを目的としたデータ活用において、サードパーティーデータを広告に活用するという事例が主流を占めていたという。

新会社は企業の支援に際し、匿名化されたソフトバンク独自のデータと博報堂グループが保有する生活者のデータに加え、Armのカスタマーデータプラットフォーム「Arm Treasure Data enterprise CDP(eCDP)」および、3社のデータ分析技術と活用ノウハウを掛け合わせることで、各企業に最適化された戦略立案から施策の実行までを手がける。

  • 提供サービスの概要

    提供サービスの概要

インキュデータ 代表取締役社長の藤平大輔氏は「顧客企業における社内データを統合した上でマーケティングを支援する。また、データマーケティングで得たデータを用いて、顧客企業の事業に活用し、営業・販売、製造・物流、商品企画などの変革も支援する。新会社が実現する未来は企業のデジタル化を支援することだ」と強調する。

  • インキュデータ 代表取締役社長の藤平大輔氏

    インキュデータ 代表取締役社長の藤平大輔氏

そして、ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼COOの今井康之氏は「昨今ではIoT/5Gでデータを収集し、AIで分析することに、さまざまな企業が取り組んでいる。データをもとに事業を展開する企業が時代を支えており、これに日本企業も目を背けるわけにはいかない。データを活用して変革を進めることは重要であり、乗り遅れた企業は衰退していく。われわれが企業に強み/弱みをヒアリングした結果、サービスの品質については自信があるが、データを用いたマーケティングや販売には満足していな状況だ。われわれは2012年にデータマーケティング部隊を創設し、本格的に取り組んできた。今回、日本企業の変革を支援するため新会社を設立し、データを活用しつつ日本企業にデータビジネスを展開することに共同で取り組む」と述べた。

  • ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼COOの今井康之氏

    ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼COOの今井康之氏

具体的にはArm Treasure Data eCDPを活用することで、顧客企業が独自に保有するファーストパーティーデータを集約し、パートナー企業のデータであるセカンドパーティーデータやサードパーティーデータと組み合わせて分析した上で、Arm Treasure Data eCDPと連携する各種マーケティングツールなど外部システムを活用した施策を実行できるという。

  • クライアント支援の流れ(1)

    クライアント支援の流れ(1)

例えば顧客企業のマーケティング活動において、パーソナライズを軸とした施策により集客の効率化や優良顧客の増加、顧客の離反防止などが期待できるほか、データ分析により引き出された、生活者の潜在的なニーズや意識などのインサイトを営業、商品企画、製造、物流の過程などにも活用することを可能としている。

  • クライアント支援の流れ(2)

    クライアント支援の流れ(2)

顧客企業の支援は「データ活用の戦略立案」「データ分析・活用基盤の構築・導入支援」「データ分析・活用基盤の運用と各種施策の実行支援」の3つのプロセスで実施。データ活用の戦略立案では、顧客企業の課題解決に向けた変革の全体設計を行い、データ活用の戦略を策定する。

データ分析・活用基盤を構築・導入支援については、顧客企業のさまざまなステークホルダーやベンダー、セカンドパーティーデータおよびサードパーティーデータの提供事業者などとの調整を進めながら、戦略を具現化するためのデータ分析・活用基盤の構築・導入を支援する。

データ分析・活用基盤の運用と各種施策の実行支援に関しては、多種多様なデータがインポートされるデータ分析・活用基盤を、顧客企業が運用できるようにするほか、エンドユーザー視点のマーケティング活動の設計、事業計画の策定、各種施策の実行を支援する。

博報堂 取締役常務執行役員の中谷吉孝氏は「われわれは6年前から『生活者データ・ドリブン・マーケティング』を掲げ、マーケティングソリューション群『生活者DATA WORKS』は数百社で活用されている。ソフトバンクが持つBtoBとBtoCの各顧客基盤とテクノロジー、Armが有するCDPプラットフォームのテクノロジーを掛け合わせた大きな力を顧客企業の価値創造に発揮できれば考えている」と意気込みを語った。

  • 博報堂 取締役常務執行役員の中谷吉孝氏

    博報堂 取締役常務執行役員の中谷吉孝氏

また、Arm データビジネス担当 バイス・プレジデント 兼 ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏は「われわれでは手が届かなかったところに対して、両社の力を借りてデータプロジェクトのスタートから施策・管理までを一気通貫で顧客支援を実現する体制が整う。そのため、マーケティングの外にまで適用領域を広げるパートナーシップだと考えている」と説明した。

  • Arm データビジネス担当 バイス・プレジデント 兼 ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏

    Arm データビジネス担当 バイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏