ヴイエムウェアは7月4日、R&D部門の技術戦略に関する記者説明会を開催した。VMwareでCTO(最高技術責任者)を務めるレイ・オファレル氏が説明を行った。
オファレル氏は、現在さまざまな新興テクノロジーが登場しているが、それらのうち、同社が注力している技術として「エッジ/IoT」「クラウド」「AI/機械学習」「モバイル」を挙げた。これら4つのテクノロジーはオーケストレーションされて進化していくという。
オファレル氏は、「エッジ/IoT」については、コネクテッドカーを例にとり、説明を行った。コネクテッドカーはセンサーを搭載し、さまざまなデータを送受しているが、「まだ受け身の状況」だという。「コネクテッドカーは赤信号があれば、停止することはできるが、信号と双方向の通信までは行っていない」(同氏)
オファレル氏は、コネクテッドカーが今後、3つのフェーズを経て、進化していくと述べた。最初のフェーズでは、モニタリングと可視化によって、データを意思決定につなげる。第2のフェーズでは、最初のフェーズの結果に基づき、インフラが意思決定を行う。第3のフェーズでは、データの相互作用から意思決定が行われる。
第3のフェーズに達した段階では、コネクテッドカーが道路を走行する際、内部のセンサーが道路わきの信号や標識などとアクティブにコミュニケーションすることになる。
オファレル氏は、コネクテッドカーの進化においては、ビジネスモデルを考えていく必要もあると指摘した。例えば、救急車はできるだけ早く病院に到着する必要がある。そのため、赤信号でも通過できる。救急車がコネクテッドカーである場合に同様の運用を実現するなら、センサーが信号と通信して、信号が赤であれば救急車を通過させることができるよう、青に変更するような仕組みが必要となる。
「クラウド」については、オファレル氏は「物理特性」「コスト」「地理的条件」という3つの法則を挙げた。
「クラウドは、遠隔のデータセンターとデータのやり取りを行うため、レイテンシーが発生することがある。これは、エッジでクラウドを構築することで解決できる。また、IoTデバイスで受信したデータをすべてクラウド上に送信して保存するとなると、それなりのコストがかかることになるので、考慮が必要。さらに、各国では、データの保存に関する法規制を施行しており、それらに対応する必要がある」(オファレル氏)
そして、企業・組織では複数のクラウドが使われていることから、複数のクラウドを管理できるモデルが必要だという。
「AI/機械学習」については、「インフラにどうやってスマートネスを構築するかがポイントとなる」と、オファレル氏は語った。AIにおいては学習モデルが用いられるが、このモデルにおいて「早く学習すること」「規模感をもって拡大していくこと」が重要だという。
さらにオファレル氏は、新しいテクノロジーについて、課題や自社にもたらされるメリットを考える必要があると述べた。新しいテクノロジーの例として、実用化が迫っている量子コンピュータを挙げた。
量子コンピュータが影響を及ぼす要素として、「暗号化」が紹介された。なぜなら、量子コンピュータは128ビットの共通暗号鍵に対して2の64乗の計算量で総当たり攻撃を成功させることができる。同様に、256ビットの共通暗号鍵に対しては2の128乗の計算量で総当たり攻撃が可能だ。そのため、量子コンピュータが実現した世界では、共通鍵は2倍のサイズが必要となる。
公開鍵については、2048ビットのRSA鍵なら、約4000量子ビットの量子コンピュータであれば秘密鍵を見つけることができる。256ビットのモジュラー楕円曲線の場合、約2300量子ビットの量子コンピュータなら秘密鍵を発見できる。こうしたことから、公開鍵については、新たなアルゴリズムの開発が求められる。
こうした暗号化への影響を考えると、量子コンピュータがいつ実現するか正確にはわからないが、「ソフトウェアベンダーは対策を講じるために、そろそろ準備を始める必要がある」とオファレル氏は指摘した。
「量子コンピュータによってコンピューティングの在り方が変わる」として、VMwareは量子コンピュータの脅威が現実化する前に、取り組みを開始している。その例として、オファレル氏は、同じDellグループのRSAセキュリティとのパートナーシップ、大学とのソリューション開発などを挙げた。
オファレル氏は、「エッジ/IoT、クラウド、AI/機械学習、モバイルという4つのテクノロジーはデジタルトランスフォーメーションの基盤であり、デジタルトランスフォーメーションは産業革命以上のインパクトをもたらす。また、新しい技術が出てきたら、まずはモニタリングを行うことが大切。そして、次世代に向けた確かな未来を築くためにその技術をどう活用するかを検討すべき」と、話を締めくくった。