ソフトバンクは7月2日、法人事業に特化した戦略説明会を開催した。
この中で、ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 今井康之氏は、「ソフトバンクはこれまで、固定電話やモバイルを中心に展開してきたが、最近は、新しいテクノロジーによってロボット、AI、RPA、セキュリティ、デジタルマーケティング、クラウド、IoTなど、成長領域でさまざまなソリューションを提供可能になってきた。2018年度の売上は6,025億円で営業利益は763億円であったが、営業利益は数年で倍増していきたい。現在は生産性の向上に向け、AIやRPAでいかに効率的にやっていくかが、どの企業においても課題となっている。それをソリューションとして提供することで、解決していく。法人事業のミッションは、企業のペインポイントを解決することだ。そこに注力していく」と述べた。
また、同氏は法人事業における同社の強みについて、「必要なことはパートナーとの共創だ。それがこれまで成果が上がってきた要因だ。ソフトバンクは、売上1,000億円以上の上場企業の94%と取引しているという強固な基盤を持っている。また、法人だけでなく、ユーザーと直接やりとりしており、コンシューマと法人の両方をやっているからこそお役に立てる。今後は、BtoBtoCがビジネスの中心で、ソフトバンクは一気通貫で提供できる点が差別化ポイントだ。また、Yahoo!を子会社したことにより、マルチキャリアで提供できる」と語った。
今井氏によれば、法人事業の営業利益倍増の内訳としては、キャリア事業、グロ-バル事業、トレジャーデータを中心とするデジタルマーケティング事業も伸ばすが、半分は新たに設立したデジタルトランスフォーメーション(DX)本部による、新規ビジネスで賄うという。
DX本部は、同社が2017年10月に各セクションの精鋭120名を集めて設立した新規事業に特化した部門。これまで、主事業である通信ではなく、新規事業に必要なスキルを徹底強化してきたという。同部門のミッションは、日本の社会課題に対峙することと、ソフトバンクの次世代の柱となる事業を創出すること。
同部門のトップであるソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 本部長 河西 慎太郎氏は、「パートナー共創とプラットフォーム型ビジネスモデルが基本戦略だ。エコシステムによって、ビジネスモデルを磨き上げ、社会課題を解決していく」と意気込みを語った。
同事業部では、現在、事業化に向け35の案件が進行中で、このうち17の案件は、ビジネスモデルも固まり、2020年度までに収益化する予定だという。
その中の1つが、人手不足が深刻な物流業界のDXだ。とくに、配送拠点から実際に顧客への荷物の受け渡しを行うラストワンマイルに注目しており、注文に応じたドライバーの確保と、ネットスーパー(生鮮食料品)利用拡大に向けた、20-23時配送を実現するという。
これに向け同社は、イオン九州と協業し、実証実験を行っていることも同日発表された。
両社協業の第1段階では、2019年6月から、夜間配送の需要調査としてイオンショッパーズ福岡店(福岡市中央区天神)のネットスーパーの注文品を、夜間22~23時を含む時間帯に配送する実験を行っており、第2段階として、ネットスーパーの注文品の配送する業務を、地域の配送ドライバーとマッチングするシステムの実証実験に今後取り組んでいく。
配送ドライバーとマッチングでは、協業パートナーであるCBcloudの配送マッチングサービス「PickGo」を活用。同サービスには登録ドライバーが1万人おり、このサービスを活用することで、荷量に応じて必要な時に、必要な車両数だけを手配し、地域の登録ドライバーとマッチングして配送を行っていく。これによりこれまで十分に対応できなかった、22時以降の配送需要にも対応し、今後さらに配送対応時間を拡大することを目指すという。
また将来は、ドローン、ロボット配送、自動運転配送もこのプラットフォームでサービスとして展開していくという。
ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙氏は説明会において、「IoTは2030年に1,534兆円、AIは2025年に318兆円、データ活用は2023年に40兆円という市場(グローバル)になることが予測され、IoT/5G、DATA、AIの3つのキーテクノロジーが大きなチャンスを生む。これらテクノロジーの進化によってあらゆる産業が再定義される。ソフトバンクは社会課題の解決を企業とともに推進していくことが一番狙いだ」と語った。