NTTは6月18日、情報処理システムの高性能化を目指した光インターコネクト技術を開発し、AI(人工知能)処理の高速化に成功したと発表した。新技術は同社のAI技術ブランド「corevo」を支えるものとなり、将来のIOWN(アイオン、Innovative Optical & Wireless Network)構想実現につながる新たな情報処理技術として、今後も研究開発を継続する。
今回、光通信用に研究開発を続けてきた高速プロトコル技術・通信処理回路技術を活用し、情報処理システムの性能向上を実現する光インターコネクトを開発した。同技術を複数のサーバで大量のデータを分担して処理する「分散深層学習」に適用した結果、学習速度を従来技術比で7%高めることに成功したという。
これにより、GPU台数を増やした場合の効果を見積もると、32GPU接続時に40%程度の速度向上が見込まれるとしている。
今回の成果における光インターコネクトは、分散深層学習のデータ共有の高速化を3つの技術的ポイントで実現したという。
1つ目は、CPUやメインメモリを介さずに、学習処理を行うGPUと光インターコネクト間で直接データを授受できるようにし、より密接に結び付けるGPU-光インターコネクト間ダイレクト通信。2つ目は、データを順に隣に送りながら加算することで効率的にデータ共有が行える100Gbit/sの高速光リングネットワークと、複雑なレイヤー処理を排除した光リングの高速性を活かすプロトコル、3つ目はデータ共有処理を専用のハードウェアで高速に実行するアクセラレータ回路となる。
今回の技術を大規模なAI学習を行うデータセンターに導入することで、今後の自動運転・遺伝解析・気象予測など、大量のデータを扱うAI学習処理の高性能・低消費電力化を期待できるという。
さらに、今後爆発的に増大するデータ量や複雑化するデータ処理に対して、LSIの大規模化・高速化では処理能力の向上が限界を迎える時代(ポストムーア時代)が到来するとしており、ポストムーア時代のIOWN構想の実現に向けた、光と電子の利点を結び付けた新アーキテクチャによる情報処理システムを実現する技術として、開発した技術を応用・発展させていく。