ワコールは5月29日、ストレスフリーに消費者が望むスタイルでインナーウェア選びが体験できる次世代インナーウェアショップ「ワコール3D smart & try(スマート アンド トライ)」を東急プラザ表参道原宿に同30日にオープンすると発表した。今回、実際に店舗に赴き、現地取材を行ったので、その模様をお伝えする。
3Dボディスキャナー計測とAIによる接客
ワコール3D smart & tryは、同社が独自に開発した新しい接客サービス「3D smart & try」が体験できる初の常設店舗。消費者の希望に合わせて、セルフサービスで計測、商品の検索・試着・購入することに加え、ビューティーアドバイザーによるカウンセリングで、個別の要望や悩みに応じた提案を受けることもできる。
同社独自の3Dボディスキャナーと接客AIを融合しており、3Dボディスキャナーは約5秒でボディオーバル(胴体断面の形状)やバストのバージス(底面の幅)、ボリューム(容量)、ピッチ(左右間の距離)、トップテーパー(上半身正面の形状)、ボトムテーパー(下半身正面の形状)を約150万点という点群を計測し、3~5段階で体型の特徴を判定。
これにより、体型に適したブラジャーやショーツ、ガードル、肌着、ランジェリーなどのサイズがわかる。
その後、スキャンした体型データをもとにワコールの販売の接客ノウハウを学習したAI搭載のタブレットを用いて、個々人の体型にあった商品を選択する。
ブラジャーの場合、「デザイン」「シルエット」「お悩み」「フリーワード」で本人の好みを細かく絞り込むことができ、パーソナライズされた商品をレコメンドしてくれる。
これにより、究極の1着を見つけることもできれば、幅広い選択肢の中から自分のお気に入りを比較しながら見つけることも可能としている。
なお、3D smart & tryは日本IBMが構想策定におけるコンサルティングを実施し、接客AIの構築を支援。
接客AIは、IBM Cloud上のIBM Watsonの照会応答機能(IBM Watson Assistant)を利用し、インナーウェアの商品情報や接客ノウハウを学習して自然な対話を行うことができ、サイズや体型、好みに合わせた最適な商品提案を支援するチャットボットだ。
消費者の悩みや要望に加え、商品の素材や形状などの要素、さらにワコールが独自に培った接客ノウハウを学習している。
“正しい下着選び”をしてもらうために
同社では、ワコール3D smart & tryのオープンに先立ち、4月19日~5月12日に表参道ヒルズで期間限定のポップアップショップを展開。期間中(24日間)の体験者は988人、常に4~5人待ちで列が絶えることがなく、3Dボディスキャナーはフル稼働状態であり、SNSなどの口コミから体験を目的とした来店者も多かったという。
30日にオープンするショップには、3台の3Dボディスキャナーと2つのカウンセリングルームを設け、ショップの中央には接客AIを搭載したタブレットが閲覧できるスペースを5カ所用意。
計測した体型データや接客AIとの対話によるおすすめの下着をチェックすることを可能とし、自由に試着や購入など消費者の望むスタイル・ペースで気軽にインナーウェア選びを楽しむことができる。
ただ、直営店や百貨店へのテナント出店、ECサイトでも商品の購入ができるワコールが、なぜこのようなことに取り組むかは気になるところだ。
同社の調査によると、約7割の消費者が接客を必要としないなどの理由でブラジャーのサイズ違いを経験していることに加え、既存店舗では手書きのカルテを作成していたものの、一括管理するのではなく、各店舗で管理していたという。
そのため、同社では多様化する消費者の購買行動に対して、店舗におけるサービスをデジタル技術で変革し、店舗とECの連携を図ることで消費者と「より深く、広く、長く」つながる環境を構築する独自のオムニチャネル戦略に取り組んでいる。
従来は、販売チャネルやアイテムで分断していた顧客・在庫・商品データを一括管理することで、事業効率の向上を目指しており、その一環としてワコール3D smart & tryをオープンする。
新規の消費者に対してはストレスのない環境を提供するとともに、既存の消費者が計測したデータは体型分析や過去のデータと比較できるためボディケアにも活用でき、パーソナライズされた新たな顧客体験の創出にもつながる。
また、入店から商品購入までの時間短縮や在庫管理の適正化が図れ、マーケティングの展開にも役立つ。今後、2022年3月までに全国の直営店や百貨店の店舗に3Dボディスキャナー100台の導入を計画しており、同社が定義する“正しい下着選び”が世間に浸透することに注目していきたい。