オリンパスは3月1日、同社の次世代製品、サービスのイノベーションプラットフォームである「ICT-AIプラットフォーム」をAzure上に構築すると発表した。
今後、オリンパスは、「ICT-AIプラットフォーム」上で、医療や科学、映像事業などの事業分野において、既存製品サービスの高付加価値化と新規ビジネスの開拓などに向け、同社のAIやIoTを活用したサービスを提供していく予定で、マイクロソフト本社の研究開発部門とも密接に連携し、最新テクノロジの導入を図るとともに、米国や欧州のマイクロソフトコンサルティングサービスと連携して、最新事例から得られた知見を元に、幅広いプロジェクトを展開していくという。
オリンパス 取締役専務執行役員 技術統括役員 兼 技術開発部門長 小川治男氏は、Azureを活用する理由について、「AI、IoT、ロボティクスなどのIT技術を駆使しなければ、『世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現』という経営理念を実現することは難しい。これまでは、医師や研究者、検査者に使っていただく道具を提供してきたが、今後は、これらの人の働く環境や経営者の環境をよくしていきたいという目標もある。これらに関わる認識/分析、治療/処置、レポートといった技術はオリンパスだけでは提供できない。そのため、マイクロソフトさんと連携していくことにした」と説明した。
北米で展開している「OLYMPUS Scientific Cloud」は、Azureを基盤としたIoTサービスで、各種センサーや非破壊検査用デバイスなどをクラウドへ常時接続することで、ソフトウェアのシームレスな更新、大量データのバックアップ、データの可視化などが可能となっており、今後は、共同作業や予兆保全、データの保護も視野に入れていくという。
「(OLYMPUS Scientific Cloud)のデータはお客様のデータということになり、強固なセキュリティとプライバシーで守られている必要があり、これをAzureで担保している。まだサービス自体は少ないが、一度基盤を構築してしまえば、サービスをどんどん追加でき、いろいろなお客様が利用できる。これらのサービスを利用することで、教育にかかるコスト・時間の低減、工程の省力化や均質化、生産性向上などを図ることができる。また、AIを活用することで、病理画像の診断、金属疲労、基盤の不良発見にAIを利用することができ、研究者や検査者の環境に対しても付加価値を与えることができる。現在、AIはエッジの各機器に組み込んでいるが、解析をより高度化していくためには、クラウドの活用が必須だ」(小川氏)
日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏は、「デジタルトランスフォーメーションではAIがキーになるが、徐々に民主化されている」と、AI利用が拡大しているとの認識を示した上で、同社のAIを利用した事例として、近大水産研究所がAIとIot活用でマダイの稚魚選別を効率化している事例や、JTBやNAVITIMEがインバウンド向けにレストラン予約サービスを展開している事例を紹介。
そして、AIを活用を広げるための活動について、人材育成として、Auzreエンジニアを2020年までに10万人育成していく取り組みやコミュニティの推進を行っている活動を説明。また、リーダーに向け大学やビジネススクールと連携するプログラムも近日中に発表する予定であることも明らかにした。
また、テクノロジ&コンサル支援では、デジタルトランスフォーメーションを支援するデジタルアドバイザーを増やしており、ビジネス戦略立案から導入までを支援している点や、社会変革支援ではAI For Accessibilityや災害・環境問題に対応するAI for Earthも提供している点を紹介した。
来日中の米マイクロソフト グローバルセールス マーケティング & オペレーション エグゼクティブ バイスプレジデント兼プレジデント ジャンフィリップ クルトワ氏は、AIの活用について、「企業はデジタル化すべきときにきており、すべてがデジタル化の方向に向かっている。これには『Tech Intensity(技術の強さ)』が必要になる。ただ、デジタル化するだけではなく、デジタルの能力を使う必要がある。AIはGame Changerであり、戦略を立てて活用していく必要がある。ただ、アジア地域においては、4割程度の企業しかAIを利用していない。マイクロソフトは25年にわたってAIに投資しており、AIの能力が人間に比類するものも出てきている。これらをお客様に活用してもらうためには、テクノロジーへの信頼、パートナーへの信頼が必要だ。われわれは、その仲立ちをしていく。われわれはお客様の競合になるつもりはなく、それがアドバンテージとなる」と語った。