SAS Institute Japan 代表取締役社長 堀田徹哉氏

SAS Institute Japanは2月5日、2019年度 ビジネス戦略発表会を開催した。発表会では、代表取締役社長の堀田徹哉氏が2018年度の業績と2019年度の事業戦略を説明した。

同社の2018年度の業績は、ソフトウェアとサービスの双方において2ケタ成長を達成し、過去最高の売上となったという。堀田氏は「2016年に代表取締役社長に就任してから、3年連続で2ケタ成長を遂げている」と、同社の好調ぶりをアピールした。

成長の牽引役となったのが、前年比700%を超える成長を果たしたデータ分析プラットフォーム「SAS Viya」だ。加えて、堀田氏はViyaをはじめとした同社の製品がさまざまな業界の顧客で利用が進み、その結果、デジタル・トランスフォーメーションに貢献したことも成長の要因と説明した。

例えば、金融業界においては、メガバンク・地銀・証券における、FATF(Financial Action Task Force)の対日審査に向けたアンチ・マネーロンダリング(AML)ソリューションのドミナント展開、AIテクノロジーの規制対応業務への展開が進んだ。

堀田氏は、金融業における新たな動きとして、「デジタル・トランスフォーメーションの基盤の整備」を挙げた。これにより、スキルや言語を問わずに、あらゆる社員があらゆるデータにアクセスでいるアナリティクスの民主化が進められているという。

  • 金融業界におけるデジタル・トランスフォーメーション

また、ライフサイエンス業界においては、臨床試験データのセキュアな公開を可能とするCTDT(SAS Clinical Trial Data Transparency)の導入により、製薬会社のグローバルスタンダードへの対応を促進、またSAS Viyaを活用したイノベーションのための基盤導入が加速した。

堀田氏は、ライフサイエンス業界における新たな動きとして、セールス&マーケティングにおけるデータ活用を挙げた。具体的には、MRの行動履歴などを分析することで、営業活動の最適化を図っているという。

  • ライフサイエンス業界におけるデジタル・トランスフォーメーション

そのほか、製造業では、R&D領域へのAI・アナリティクスの適用、新製品開発プロセスにAI技術でイノベーションをもたらす取り組みが増加しているという。

  • 運輸、小売り・流通、製造業におけるデジタル・トランスフォーメーション

一方、2019年度は「コアビジネス領域の成長」「カスタマーリレーションの強化」「将来への準備と社会への貢献」を3本の柱として、事業を進めていく。堀田氏は、コアビジネス領域について、「各インダストリーでデジタル・トランスフォーメーションが進んできているので、この動きを維持したい。したがって、大きな転換は不要と考えている」と述べた。

  • 「コアビジネス領域の成長」における目標

「コアビジネス領域の成長」を推進していく際に、核となるのが「SAS Viya」だ。Viyaについては、新たな体制を構築するとともに、「新たな分野へのAI適用によるイノベーション」と「企業のデジタル・トランスフォーメーションを加速する、Enterprise Open Analytics Platform」を推進する。

「Enterprise Open Analytics Platform」とは、Viyaの特徴である「オープン」「アナリティクスライフサイクル」「ガバナンス」をベースに、「アナリティクスの民主化」「アナリティクス・ガバナンス」「Ready to useの先端テクノロジー」「オペレーショナライズと実用化」を提供することを意味する。

堀田氏は「オープン」について、「Viyaでは、SAS言語でコーディングしたモデル、RやPythonでコーディングしたモデルを比較できる。つまり、言語の壁を越えて、ユーザーがコラボレーションできる。若い世代の技術者はRやPythonが得意であることが多く、Viyaであれば、企業でSAS言語を使っていても、彼らの技術を生かすことができる」と説明した。こうしたオープン性がアナリティクスの民主化に貢献する。

「アナリティクスライフサイクル」とは、SASという単一のプラットフォームでアナリティクスに関するすべての作業が完結することを意味する。堀田氏は、「企業がViyaを導入する際に、最も評価するのはSASでアナリティクスが完結する点。業務にアナリティクスを落とし込むには、アナリティクスライフサイクルをカバーできる必要があり、デジタル・トランスフォーメーションを進めるうえでも重要になる」と語った。

「ガバナンス」とは、AIによる分析やアナリティクスの結果について、説明責任を果たせることを意味する。これもまた、デジタル・トランスフォーメーションを進めていく上での課題となるという。

  • デジタル・トランスフォーメーションに貢献する「SAS Viya」の機能

「カスタマーリレーションの強化」としては、2018年に西日本のビジネスが好調だったことから、西日本におけるパートナーを強化していく。

  • 「カスタマーリレーションの強化」の概要

「将来への準備と社会への貢献」としては、これまでも力を入れてきた人材育成支援を続けていく。堀田氏は「日本にもデータサイエンティストがいないわけではないが、米国に比べるとキャリアパスの整備が進んでいない。その1つに、教育機関において、データサイエンティストに関するカリキュラムが未整備である点が考えられる。そこで、われわれはさまざな支援活動を行っている」と話した。

具体的には、小学生向けのイベント「親子でデータサイエンス」、同志社大学と筑波大学における講義を実施したほか、大学と共同で「データサイエンススキル認定」制度に取り組んでいる。

  • 「将来への準備と社会への貢献」の概要