以前の記事でデータ・ドリブンな変革を成功させる5つの重要な要素についてリストアップしました。今回はCDO(最高データ責任者)の役割について解説します。

あらゆる場所にデータが分散: ビジネス活動におけるデータの重要性が拡大

最近、いろいろな企業と接する中、ビジネス環境に関して1つの暗黙のコンセンサスがあります。それは、データをあらゆる角度から分析する専門の人材が必要だということです。なぜでしょう? データは顧客を理解することや内部の業務を効率化し、収益性を上げ、ビジネスプロセスを最適化する際に役立つ、組織にとっての資産だからです。

米Gartnerのアナリストであるダグラス・レイニー(Douglas Laney)氏の著書である「Infonomics」の一節は、データの必要性を以下のように明確に表現しています。

「最近、ある大手保険会社のCIOが私に述べたように、『オフィスの什器リストはあるのに、会社にどのようなデータがあるかのリストは誰も作っていないなんて馬鹿げている』」(レイニー氏)

什器と違いデータは、常に動き変化するものです。私たちが人間として、顧客として変化していくように、企業もビジネスモデルを変更したり、新しい部門を立ち上げてオペレーションを強化したり、プロセスを変革したりします。

ダイナミックに変化するという情報の性質によって、組織の内外を問わず、アクセスできるデータはより複雑になり、大量になっていきます。このデータにまつわる大きな流れは、簡単に扱えるものではありません。

役職の定義: CDOに何を求めるべきか

CMO(最高マーケティング責任者)が企業のマーケティング活動を担当しているように、CDOは、企業におけるデータの運用と戦略を監督・管理し、デザインする仕事を担当しています。

CレベルのエグゼクティブであるCDOが取る行動はすべて、1つの最終目標を目指しています。それは組織のデータ資源を活用することで最高のビジネス価値を生み出し、新たな事業機会や脅威を発見することです。

では、CDOはどのようにこの最終目標を達成するのでしょうか? 各ステークホルダーにデータ主導の有意義なインサイトを与えることで、目標達成を目指していきます。

意志決定プロセスにおける、いかなるポイントでも目的に応じた情報を活用できるようになれば、組織内のビジネスユーザーは上級のチームや取締役であれ、現場の従業員であれ、より正確な価値主導型の決定を下すことが可能になります。

CDOはデータの力によって従来のプロセスを変革し、隠れた価値を見出し、実現していきます。「1+1+1+1+1=5」を「(1+1+1) X (1+1) = 6」に変えることはやり方さえ分かっていれば簡単なのです。

組織内すべてのビジネスユーザーに対してシーンに応じ、さまざまなデータの利用を可能にするためには、組織としてデータの運用に対するアプローチを根本的に変えなくてはなりません。この変革において、会社全体のガイド役となるのもやはりCDOの仕事なのです。

CDOの仕事は包括的かつ統合的なものであるため、例えばデジタルマーケティング、アナリティクス、サプライチェーンマネジメント、CRMといったビジネス機能全般における専門知識を持つことが要求されます。

彼らの責務はITインフラ全体における論理的統合を行い、組織全体の情報のサイロ化を撤廃し、誰もが必要な時と場合に応じて利用できる巨大な相互接続されたデータプールを実現することです。

加えて、CDOおよびチームは、組織内外のステークホルダーと強い関係を構築するだけでなく、組織内のキーとなるビジネスリーダーおよびチームに、データ主導のオペレーションを採用することの意義を伝えなくてはなりません。そのため、高いコミュニケーションスキルを持つことが必要となります。

また、自社のみならず業界内に影響を与えるデジタル変革および、その課題を論じ発信することができる、ソートリーダーとしての役目も期待されています。

データを適切に管理し、そこから最大のビジネス価値を引き出すためには、適切な管理者、つまり組織のデータ資源を処理、加工、管理するために必要な知識技能を備えた専門家が必要となります。専門のデータ・プロフェッショナルが求められるという事実はまさに、今日の企業活動を行う上で、データがいかに重要になったかを示しています。

すでに、組織はデータを軽んじてはいけないことに気づいています。そのような態度では、データの爆発的増加に伴い生み出される、大きなビジネスチャンスを逃す恐れがあるからです。

Cレベルのエグゼクティブたちは、データによって存在・活動し、繁栄する独立した事業ユニットの必要性を理解しています。変化、そしてデータ革命はすでに始まっています。最後に残った質問は1つです――あなたの会社はその準備ができていますか?


北村守(きたむら まもる)

クリックテック・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー

1968年生まれ。北海道小樽市出身。

2017年8月、クリックテック・ジャパン株式会社カントリーマネージャーに就任。

現在は、19年以上にわたるるIT業界における経験を生かし、クリックテック・ジャパンのトップとして、データ主導型ビジネスの可能性と認知度の向上を図り、日本市場における活性化をパートナーとともに牽引し、日本でのさらなるビジネスの発展、進化を推進する。

クリックテック・ジャパン入社以前はデマンドウェア株式会社の代表取締役社長として、日本国内のビジネス拡大と顧客満足度の向上を牽引し、同社の成長に貢献。

デマンドウェア株式会社以前は、マイクロストラテジー・ジャパン株式会社にてセールスディレクター、日本パラメトリックテクノロジー株式会社(現PTCジャパン株式会社)にてリージョナルディレクター、エリアバイスプレジデントなど、業界をリードする各社の要職を歴任してきた。