デルおよびEMCジャパンは12月4日、NVIDIA Tesla V100 SXM2 Tensor Core GPUを搭載した「Deep Learning with NVIDIA」と、Cloudera Hadoop利用を前提とした完全検証済み基盤「Machine Learning with Hadoop」という、2つのAI活用基盤を「Ready Solutions for AI」として発表した。
「Ready Solutions for AI」では、AIに最適化されたシステム設計および検証済みのAIフレームワークやライブラリを含むソフトウェアパッケージの活用によりAI環境の稼働までの時間を短縮し、AIに最適化されたハイパフォーマンス環境を提供するとしている。すでに米国では8月に発表しているが、今回、国内提供の準備が整ったため、受注を開始する。
デル インフラストラクチャ・ソリューション事業統括 ソリューション本部 本部長 正田三四郎氏は、「AIでは、インフラ設計が重たい作業になっているため、この課題を解決し、AIを普及を促進する」と、提供の目的を語る。
「Deep Learning with NVIDIA」は、Dell EMCとNVIDIA社の共同エンジニアリングによるディープ ラーニング(深層学習)向けモデルで、「PowerEdge C4140」サーバにストレージとして「Dell EMC Isilon F800」 を搭載。4枚のNVIDIA Tesla V100 SXM2 Tensor Core GPUを載せ、「Bright Cluster Manager」と 「Dell EMC Data Science Provisioning Portal」の連携によるクラスター設定、プロビジョニング、監視、および管理を実現する。価格は55,610,000円(税別)~。
「Machine Learning with Hadoop」は、Cloudera Hadoop利用を前提とした、データサイエンスとフレームワークに最適化したソリューションスタックが含まれ、既存、または新規のHadoop環境にマシンラーニング機能を導入する。
インフラは、「PowerEdge R640」および「R740xd」で構成され、コンテナ技術を用いたセルフサービスデータサイエンス環境「Cloudera Data Science Workbench」、オープンソースの統合データ解析エンジン「Apache Spark」、データサイエンティストがSparkフレームワーク上のインテル BigDL分散ディープラーニングライブラリにアクセスするためのコンテナイメージ「Dell EMCデータサイエンス プロビジョニングエンジン」を搭載する。価格は24,930,000円(税別)~。
デル 執行役員 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 製品本部 本部長 上原宏氏は、「昨年7月に第14世代のPowerEdgeを提供し、販売は順調に推移しているが、デルのサーバにおける高付加価値に関する情報提供は不十分だ。今後は、問題解決に貢献する施策を打っていきたい。それが、今回の施策のねらいだ」と語った。
今回の「Ready Solutions for AI」がその第一弾で、2019年に第2弾、第3弾を発表するという。なお、第2弾、第3弾の内容は明らかにされなかった。
「Ready Solutions for AI」の提供においては、PowerEdge「Ready Solution」ポートフォリオの拡充、「Ready Solution for AI」導入コンサルティングの開始、データサイエンティスト育成プログラムの強化、AIパートナー連携の推進、「Ready Solution for AIエクスペリエンスセンター」の開設という5つの施策を行うという。
AI導入サービスでは、本ソリューションに導入されるAI関連ツール群の使い方、選択方法のアドバイス、ベストプラクティスの提供を行うアドバイザリーサービスにより、AI環境をすぐに利用できるように支援。また、アクセラレーターサービスでは、データエンジニアリングやモデル構築作業をDell EMCが実施、ユーザーにスキル移行を行うものや、AI・データサイエンスの活用テーマの設定や評価するサービスなど、ユーザーの要望に応じた業務立上げを支援する。
正田氏はAIの活用を、先進ユーザー、従来型のデータ分析ユーザー、AI未経験ユーザーの3つに分類した上で、「今回の製品は、従来型のデータ分析ユーザーのお客様のスイートスポットにはまる製品だ」と述べた。
データサイエンティストの育成では、最短6カ月で自律的にAI・データサイエンス業務を実施できるよう人材育成を行うデータサイエンティスト育成サービスを提供。
また、「Ready Solutions for AI」では、データサイエンティスト向けに、ポータル画面を提供。このポータルは、データサイエンティストが使うGUIで、インフラを意識せず作業できるように用意したもの。このサービスでは、TensorFlowなどのライブラリをテンプレートを使って利用できる。
AIパートナー連携では、サービスプロバイダ、コンサルティング、SIerなどを対象に、他のソリューションと組み合わせながらユーザーに本ソリューションを提供するパートナーを拡大する。
正田氏は「パートナー連携は、お客様に届ける部分が成功のキモ。まずは製造と金融のお客様をターゲットにし、その後、流通などにも拡大していきたい」と語った。
そして、「PowerEdge AI エクスペリエンスセンター」は、東京三田にあるカスマターソリューションセンター内に設置し、「Ready Solution for AI」の体験、検証・導入に関するの打ち合わせ、Dell EMCの各種ソリューションのグローバルラボと連携した検証ができる環境を提供する。
デル 最高技術責任者 黒田晴彦氏はAIの活用について、「第4次産業はコンピュータと物理的なものが融合して、デジタル変革を行っていく時代で、それに必要な技術として、AR/VR、IoT、マルチクラウド、AIとマシンラーニンングの4つがある。VR/ARで、物理的ものとコンピュータの融合を見ることができ、IoTは、これをうまく制御しないとデジタル変革の時代を勝ち抜いていけない。また、さまざまなクラウドを使い、それぞれのいいとこ取りして使いこなしていく必要がある。これまでは、世界で21番目という労働生産性を人の数と時間(残業)で補ってきた。今後は、AIによって少子高齢化や生産労働生産性の課題を解決して、第4次産業革命を日本がリードしてほしい」と語った。