当社の製品「Commvault Cloud Data Protection」のユーザーを対象に行ったクラウドの利用目的に関する調査(TechValidate Survey of 199 users of Commvault Cloud Data Protection, April 2018)によると、75%が 「データのバックアップ」、49%が 「災害復旧」、43%が 「データのアーカイブ」、39%が 「テープドライブの置き換え」、36%が 「仮想マシンのバックアップ」、28%が 「クラウドネイティブのアプリケーションのバックアップ」と回答している。 つまり、データを保護するために、クラウドを利用している企業が多い。

一方、最近のクラウドベンダーの取り組みを見てみると、データ転送のレイテンシーを短くするために、あらゆる場所にデータセンターを建設し、クラウドリージョンの数を増やしている。

加えて、GDPRをはじめとする世界各国のデータ関連規制によりデータを取り巻く環境はますます複雑になっている。そのため、マルチクラウド環境においては、データの管理と維持がより複雑になっており、複数の異なるパブリッククラウドやプライベートクラウドに保存されているデータの管理は、さらに煩雑になるばかりだ。

クラウドのデータを管理・保護するための5つの具体策

こうした中、マルチクラウド環境のメリットであるアジリティ(敏捷性) を得るには、クラウド上のデータが戦略的に管理・保護できている必要がある。多くの組織においては、この点が重要な課題となり、たびたび議論されている。

クラウド上のデータを適切に管理・保護するにあたっては、以下の5つの点を明確にしておく必要がある。

  • クラウドやオンプレミスのデータ資産の管理方法
  • データ利用の需要に対して、どこのクラウドやどのクラウド ストレージのデータが活用されているのかを知る方法
  • マルチクラウド環境に保存されているデータやワークロードを迅速にリカバリするための方法
  • 毎月のように新しいリージョンが追加されているクラウドにグローバルのクラウド戦略を適用する方法
  • データ保護ポリシーの策定

今後、ますます多くの企業がマルチクラウドを採用するようになり、こうした課題を抱える傾向が高まることが予測される。Nemertes Researchの最高情報責任者(CIO)兼主席調査分析官のJohn Burke氏は、クラウドについて以下のように述べている。

  • 95%以上の組織がすでにマルチクラウド環境下にあり、平均で7つ以上のSaaSアプリケーションが利用されている

  • 55%以上のITワークロードが、2019年までにIaaS、PaaS、SaaSで稼働する予定

クラウド間やクラウドのリージョン間で管理しなくてはならないデータ量は膨大だ。アジリティに優れたIT企業は、さまざまなSLAや複数のリージョンにまたがるデータ保護ポリシーを実現し、クラウド内に保存されたデータを実際に組織に活用させることを可能にしている。こうした取り組みが、クラウドにおけるデータ管理の成功のカギと言える。

マルチクラウドのデータ保護を効率化する5つのポイント

マルチクラウド環境のデータ保護を効率的に行うポイントとしては、次の5つがある。

(1)ツールの統合

もし、バックアップ、リカバリ、eディスカバリー、ディザスタリカバリを複数の製品によって管理しているのなら、そのITチームはアジリティを得ることはできない。単一のデータ管理プラットフォームで、データをクラウドとオンプレミス間で移動・管理・利用が可能であれば、その業務を効率化することができる。

(2)単一のデータ ビューワーの導入

単一のデータ ビューワーがあれば、ITチームが大規模であっても迅速かつ効率的に、SLAを満たすために行動することができる。物理的なロケーションが異なっていても、共通のダッシュボードを用いてデータ・ライフサイクルを管理できれば、そのチームはより良い意思決定が行えるようになる。

(3)自動化

自動化、オーケストレーション、AIそして機械学習の機能を提供するデータ保護製品を利用すれば、時間を節約できる。また、多くの手作業を排除することにより、ITチーム本来のより戦略的なプロジェクトに専念できるようになる。

(4)クラウド対応

クラウドとネイティブに統合され、オンプレミスとクラウドのデータを一元的に管理できる製品を選択することが望ましい。これにより、バックアップやリカバリを行う際、複数のインタフェースを行ったり来たりすることなく、共通のインタフェースで作業を行うことが可能になる。

(5)大規模容量への対応

クラウドを導入する際、データ量が大きな壁となる。したがって、大きなワークロードを迅速にクラウドへ移動することができるデータ保護プラットフォームを選択するべきと言える。大規模なデータ移行をサポートするAzure Data BoxやAWS Snowballのような適切なツールと、同様に大規模なデータ移行に対応できるデータ管理プラットフォームの採用が大切である。

なお、マルチクラウド環境のデータ保護戦略を検討する際は、事前の計画に少し時間をかけていただきたい。これにより、結果として、データの可用性に対する時間、労力、ストレスを削減できる。そして、データ保護にベストプラクティスを利用することで、マルチクラウド環境に最大限の柔軟性をもたせることが可能になる。

著者プロフィール

伊吹山 正郁(いぶきやま まさふみ)

Commvault Systems Japan 株式会社

セールス エンジニアリング プリンシパル システム エンジニア

2017年3月にCommvault Systemsに入社。ソリューションの訴求、認知度向上に努める。IT ベンチャーでの駆け出し時代、初めてバックアップソフトウェアに触れ感銘を受け、それ以来、14年以上にわたり、エンタープライズ向けデータ保護・管理ソリューションの販売拡大・認知度向上に携わる。
Commvault に入社する以前はベリタステクノロジーズにて、さまざまなデータ保護・管理ソリューションを通じ、多くの新規ビジネスの立ち上げや拡大に貢献。