パナソニックは10月25日、中国の大手火鍋チェーン「ハイディーラオインターナショナルホールディングス」と進めているスマートレストランに関する説明会を開催した。パナソニックは10月28日、ハイディーラオの北京自動化1号店に「自動おかず倉庫」を納入した。
パナソニックのロボティクス技術や画像認識を掛け合わせた「自動おかず倉庫」は、顧客がオーダー端末(iPad)に入力した注文に合わせて、ロボットがおかずの皿を組み合わせてトレーに載せる作業を自動化する。皿にはRFIDが付いており、材料の盛り付け時刻などをチェックした上で配膳する。
現地で「自動おかず倉庫」に関わる事業を担う北京インハイ スマートオートメーション サイエンス&テクノロジーの総経理の山下純氏は「おかず倉庫によって、厨房の人員削減や配膳の自動化による人的ミスの排除が実現される。また、おかず倉庫は無人で、ロボットが注文に応じて動作するため、衛生面でもすぐれている」と「おかず倉庫」のアドバンテージを語った。
ハイディーラオは世界に363の店舗を展開している大手外食チェーン。山下氏によると、ハイディーラオの中国の店舗は1000平米、うち厨房を含むバックヤードは300平米の広さで、従業員の数も100人に上るといい、自動化によるメリットを享受できる環境にある。
また、配膳にかかる時間はベテランの従業員と比べるとアドバンテージはないが、店舗拡大を踏まえると、ベテランと同等のスピードで作業できる「自動おかず倉庫」には価値があるという。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社の社長の樋口泰行氏は「今、あらゆる市場で人件費が高騰しているとともに、人手不足が進んでいることから、自動化が求められている。外食産業においては、安心と安全の向上においても自動化が貢献できる。また、電機業界は競争が激しいが、現場のプロセス改善において、日本の技術が生きると考えている。今後は、急成長を遂げている中国全体の外食産業の省人化に取り組みたい。中国に比べて、日本のビジネスのスピードは遅いと言われているが、われわれは中国のプラットフォームに新たな技術を確立していきたい」と語った。
今後の展開としては、中国にフラッグシップの自動化店舗を2、3軒構えた後、既存の店舗の状況に合わせて、「自動おかず倉庫」を展開していく計画だという。
また、樋口氏は「レストランの自動化だけでは、外食産業が抱える課題を解決したことにならない。サプライチェーンマネジメントまで遡って、顧客体験を変えていく必要がある」と、次の展望も明らかにした。
ハイディーラオインターナショナルホールディングスの董事長を務める張勇氏は「創業時に、パナソニックの創始者である松下幸之助氏の手法を参考にした。さまざまなやり方を踏襲しているつもり。外食産業は非効率な面が多く、業務プロセスは数千年前と同じといってよいくらい原始的であり、頭を悩ましていた。ここにきて、外食産業を変える光が見えてきた。その1つが日本の企業の経営プロセスであり、もう1つがIoTだ」と語った。
そして、アリババの創業者であるジャック・マー氏がハイディーラオを紹介する際に、「単なる外食企業ではない。製造、物流をカバーしており、顧客と接している部分のみが外食業」と説明したことを紹介し、「サプライチェーンについては、製造業として取り組む」と述べた。
今回、パナソニックをパートナーとして選んだ理由については、「多くのベンダーに話を持ち掛けたが、『商談に乗ってこない』『できない』といった企業ばかりで、残ったのはパナソニックだった。パナソニックが提示したコストは安いわけではないが、全体最適化を考えると、安いだけではいけない」と説明した。