シーメンスPLMソフトウェアは、2018年8月28日から30日(米国時間)にかけて米国ボストンで開催した「Siemens Industry Analyst Conference 2018」の中で、電気系ソリューションおよび電気/機械の統合ソリューションに多くの時間を割いて発表を行った。今後の注力市場として自動運転、スマート製品を挙げ、今後も電気、電気系システムの成長分野に投資を続けることを明らかにした。
現在の多くの製品が電気、機械、ソフトウェアの要素から構成され複雑さが増していること、また電気/半導体の役割が大きくなっている状況に対して、製品開発の包括的なソリューションを推進する同社の製品ポートフォリオに電気系ソリューションの強化が求められたこともあり、一昨年のMentor Graphics社買収に至っている。
またMentor以外でも最近では、機械学習を活用して出力や性能の最適化を行うIC設計のためのツールであるsolido、4G/5Gのエミュレーション技術で、スマート製品の開発にとって重要な技術となるSAROKAL、欠陥の発見に使う技術で、機能的な安全性に有効なAUSTEMPERを買収して強化を図っている。
アジア・パシフィック地域のメディア向けインタビューの中でMentor Graphics社副社長のマーチン・オブライエン氏は「自動車業界では変革の最中にあり、電気系システムの開発にモデルベースのアプローチを導入し電気系のインテグレーションを進めている。これには製造分野も含まれている。トヨタでのCapital導入はサプライチェーンへの展開も視野に入っている」と語った。他にも電気系ソリューションの取り組みを行っている日本のユーザーとして矢崎総業、マツダ、イスズ、三菱FUSOなど自動車関連企業の社名を挙げ、自動運転、電気自動車といった自動車のトレンドの中で同社のソリューションが広がっていることを示した。
幅広いソリューションで自動運転開発をサポート
米国のデトロイト郊外に高速道路や市街地道路を再現した自動運転のテスト・検証を行う施設を持つ非営利団体「Americn Center for Mobility(ACM)」がある。ACMは自動運転の確立を目的として、政府、企業、団体と協力して自動運転のテスト、技術の標準化、教育を行っている。シーメンスは早い段階からACMとパートナーシップを築き、活動に参加している。同社が自動運転の市場にフォーカスしているのは、ここでのソリューションが自動車だけでなく航空機や電気の業界にも影響しているからとしているからだ。
シーメンスでシミュレーション・テスト・ソリューションの代表を務めるヤン・ルリダン氏は「我々はこの業界のサプライチェーン全体をサポートできるソリューション群を持っている。またシーメンス自身が自動運転に参入しており、その経験を反映することできることが我々をユニークな存在にしている。」と語り、また同社副社長(自動車業界担当)のエディ・ベルナルド氏は「我々は自動運転に必要なセンサやIC、シミュレーションなどを1つの会社で提供できる。我々のシステムインテグレーション能力は、車をどう作るか、どうコントロールするかのソリューションを提供できる」として、自動運転分野での同社ポジションの優位性を説明している。
また自動運転で大きくフォーカスしている分野としてバリデーションを挙げている。「安全、信頼性はクリティカルな課題。バーチャルとフィジカルのバリデーションの組み合わせをサポートし、安全な車を市場に出す手伝いをする」とヤン・ルリダン氏は語り、自動運転実現をサポートする姿勢を示した。
5G、SoCは他のスマート製品にも大きなインパクト
同社副社長(電気業界担当)のフラム・アキキ氏は「5Gはレイテンシの点で優位。リアルタイムでのコントロールが可能になる。4Gではできなかったことが可能になる。」として、5Gは自動運転のコネクティビティにとってのキーテクノロジーと語ったと同時にスマートフォンにとってもチャレンジが必要な分野としている。
またヤン・ルリダン氏はSoCもフォーカスしている分野として挙げている。「この技術は自動運転のあらゆるアプリケーションに大きな影響がある。同時に携帯電話など広い範囲の業界に影響がある」とし、同社がフォーカスしているソリューションは自動運転だけのものではなく、各種のスマート製品も視野に入っているとした。
フラム・アキキ氏は、今後もICの成長分野への投資を続ける意向を示しており、今後もさらなるソリューションの拡充が測れるものと思われる。