米VMwareは8月26日から30日までの5日間、ネバダ州ラスベガスで、同社の年次テクニカルコンファレンス「VMworld 2018」を開催している。VMwareは今年で設立20周年を迎える。世界に7万5000のパートナーを擁し、顧客は50万人超えるVMware。年次コンファレンスも年々その規模を拡大し、今回は世界から2万1000人超のパートナーや顧客らが参加した。日本からも300人超が参加しているという。
VMwareはユーザーニーズと技術とを「橋渡し」する存在
8月27日の基調講演に登壇した、米VMwareでCEOを務めるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は、「VMwareは20年にわたり、ユニークな役割を果たしてきた。VMwareはお客様のニーズと技術を橋渡しする役割を担う存在だ」と訴求した。
「例えば、ユーザーがBYODをしたいという要望には、ID管理とモビリティ管理を実行する『Workspace ONE』で管理性と利便性を両立させ、社員の生産性を向上させた。ネットワークに"拘束"されていたハードウェアには、ネットワーク仮想化の『NSX』で柔軟性を提供した。さらに、複数のパブリッククラウドとオンプレミスを一元的に運用したいという要望には、『ハイブリッドクラウド』を実現するプラットフォームを提供してきた。次のステップは、マルチクラウドへの支援だ。すべての企業は、マルチクラウドへのジャーニーの途中である」(Gelsinger氏)
Gelsinger氏は、「クラウドやモバイル、人工知能(AI)/機械学習やエッジコンピューティングは相互接続することで、(単体で利用されるよりも)さらにパワーを持ち、社会を変革する役割を果たす」と主張する。それを具現化したものがフィジカル(物理)とバーチャル(仮想)を融合させた製品だ。
例えば、ヘルメットにスマートグラスを装備し、AR(拡張現実)技術を使って機械検査を実施すれば、直接目視はできなくても、ARを通じて内部状況を把握できる。Gelsinger氏は「こうした環境を実行可能にすることがVMwareのビジョンだ」と語る。
「VMware Cloud on AWS」をアジア太平洋地域にも展開
かねてからVMwareは、「ANY Cloud, ANY APPLICATION, ANY DEVICE」をビジョンに掲げ、それぞれを実現する製品と技術の拡充に努めてきた。中でも、ハイブリッドクラウドの普及に注力している。統合型のクラウド管理プラットフォームである「VMware Cloud Foundation」がその一例だ。また、各クラウドベンダーとの積極的なパートナー戦略で、顧客の利便性向上に貢献してきた。
その1つが2016年10月に発表し、2017年8月から北米と一部欧州で提供されている「VMware Cloud on AWS」である。「VMware Cloud on AWS」は「vSphere(仮想化プラットフォーム」や「VMware Virtual SAN(仮想ストレージ)」、「VMware NSX(仮想ネットワーク)」といったVMware製品を、Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウド上で利用できるオンデマンドサービスだ。
今回の基調講演では、VMware Cloud on AWSをアジア太平洋地域に拡張することが発表された。最初はAWSのシドニーリージョンで提供を開始し、2018年第4四半期中には東京リージョン、2019年第2四半期には大阪リージョンでも提供されるという。
基調講演には昨年に引き続き、スペシャルゲストとしてAWSのCEOであるAndy Jassy(アンディ・ジェシー)氏が登壇した。
Jassy氏は「VMware Cloud on AWSは、運輸、メディア、製造業、など業種業界を問わず利用されている。導入企業数は前四半期比較で2倍のペースで伸びた。多くの顧客は、オンプレミスのアプリケーションをクラウドに移行する目的で利用している。例えば、MIT(マサチューセッツ工科大学)は、3000もの仮想マシンをオンプレミス環境からVMware Cloud on AWSを利用してクラウドに移行した。この移行期間はたった3カ月だ」と、そのメリットを紹介した。