Armは8月22日、都内でデバイスからデータまで一貫した管理が可能なIoTプラットフォーム「Arm Pelion IoT Platform」を発表し、同日から国内での提供を開始した。

英Arm IoTサービスグループ プレジデントのディペッシュ・パテル氏は「企業がIoTを導入する上でさまざま課題があり、多様なデバイスが存在し、それぞれのコネクティビティも異なり、複数の環境下で管理しなければならないことから複雑だ。そのため、導入に際してはこれらの課題を念頭に置き、コネクティビティの管理とデバイス管理、データ管理がカギとなる」と述べた。

  • 英Arm IoTサービスグループ プレジデントのディペッシュ・パテル氏

    英Arm IoTサービスグループ プレジデントのディペッシュ・パテル氏

新プラットフォームにより、データからビジネスに役立つ価値を導き出すことが可能となり、IoTデバイスとデータから価値を引き出す上で必要となる柔軟性、セキュリティ、効率性をもたらすという。主な特徴として「コネクティビティ管理機能」「デバイス管理機能」「データ管理機能」の3点を挙げている。

  • 「Arm Pelion IoT Platform」の概要

    「Arm Pelion IoT Platform」の概要

コネクティビティ管理機能はStream Technologiesの技術を活用し、アームのIoTデバイスの実装場所にかかわらずライフサイクル全体に渡るデバイスの接続と管理を実現するほか、エンタープライズ、機器メーカー、システムインテグレーター、そのほかパートナーに向けて単一のモビリティ契約でコスト効果に優れたフルマネージドのサービスとサポートをグローバルに提供。

また、eSIMオーケストレーション機能により、セルラー、LoRa、衛星コネクティビティのプロトコルを通じ、600以上のプロバイダーネットワーク上で、デバイスのオンボーディングを可能とし、既存のインフラストラクチャやシステムのオーバーレイを使用した初期設定不要で単一インタフェースによる、コネクティビティ管理、請求、コネクティビティ分析機能の提供する。

デバイス管理機能はArm Mbedを用いて、多種多様なIoTデバイスを管理し、デバイス認証により信頼関係を確立してセキュリティを管理、フィールド内でデバイスをアップデートすることに加え、制約が厳しいデバイスから、制約のあるデバイス、制約が比較的緩やかなメインストリームのデバイス、制約が緩やかな高機能ノード/ゲートウェイ装置まで、あらゆる種類のデバイスを対象に、デバイスの多様性をサポートし、複雑性を解消するという。

さらに、オンプレミス、パブリック、プライベートのクラウド環境とハイブリッド環境を対象とした、柔軟な実装オプションを揃え、セキュアなオンボーディング、プロビジョニング、OTAアップデート、ライフサイクル管理、クラス最高のセキュリティ機能により、デバイスの脆弱性を軽減するとしている。

データ管理機能は、トレジャーデータのカスタマーデータプラットフォーム「Treasure CDP」を利用し、包括的なデータ・パイプラインを通じ、あらゆるソースからのデータ収集、フォーマットや期間を問わない、IoTデータとエンタープライズデータの統合、BIツールとの直接的な連携により分析。

加えて、異種混在のIoTデバイスを対象とした高信頼性データのスキーマレスな取り込みを可能とし、異なるソース(デバイス、エンタープライズ、サードパーティ)から得られる大量のエンタープライズデータを統合・保存できるほか、ストリーミングデータと保存されたデータの両方に対する暗号化、データの許可とアクセス権のコントロールを通じ、実用的な高信頼性データをセキュアに提供するという。

  • 「Treasure CDP」の概要

    「Treasure CDP」の概要

パテル氏は「IoTプラットフォームが拡大する中でデータは重要であり、トレジャーデータは複数のデータソースからデータを収集できるため、それらを統合することでIoTの真の価値を実現できる。同社のプラットフォームは堅牢であり、柔軟性を有しており、これを活用することで、われわれが従来から掲げてきた『エンドツーエンドでデバイスからデータまでのIoTプラットフォームを構築する』というビジョンを実現できる」と、期待を口にした。

ディスラプターに反撃する準備は整った

トレジャーデータの創業者であり、Arm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏は「近年、GoogleやAmazon、Facebookといったデジタルディスラプター(デジタルテクノロジーによる創造的な破壊を行う企業)の登場により、伝統的な企業は変革を遂げるためにデジタルトランスフォーメーション(DX)がキーワードとなっている」との認識を示す。

  • Arm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏

    Arm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏

また、ディスラプターはデータ解析に裏付けられた徹底した顧客理解に取り組んでいるため、事業を拡大していると指摘。そして、これらのディスラプターに伝統的な企業が対応するためには、従来は顧客データとデバイスデータの利用は分離していたが、ヒトとモノのデータを掛け合わせることでビジネスイノベーションを起こし、次世代のDXはデジタルマーケティングとIoTを融合する必要性があるいう。

Arm Pelion IoT Platformは、Treasure CDPを組み合わせており、まさに同氏が言うデジタルマーケティングとIoTを融合したプラットフォームだ。これにより、次世代のDXを可能とし、これまで思ってもみなかったデータの価値が生まれるようになるという。一例としては、テレマティクス保険を挙げていた。

  • ヒトとモノのデータを融合したプラットフォームが次世代のDXを可能にするという

    ヒトとモノのデータを融合したプラットフォームが次世代のDXを可能にするという

同氏は「Armとトレジャーデータ、顧客が一枚岩になることで、ようやくディスラプターに反撃する準備が整った。これに資する開発投資とGo-To-Marketへの投資を進めていく」と力を込めていた。

ソフトバンクグループ 取締役 ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮内謙氏は「ソフトバンクとしても今年度内に1000のIoTのプロジェクトを予定しており、現状では製造業や流通など約200のプロジェクトが動いている。世界中のエンタープライズ分野でIoTが一気に加速していくため、われわれとしてはIoTを徹底的に推進していく」と、抱負を述べていた。

  • 左から宮内氏、パテル氏、芳川氏

    左から宮内氏、パテル氏、芳川氏