AIのさじ加減を知るにはトライアル&エラーしかない

実際の効果はどうだったのか。新海氏はAIが導く予測モデルについて、「さまざまな施策を行って試行錯誤しているところではありますが」と前置きしたうえで、こう話す。

「LTVは購入後90日と150日の2つのポイントで見ていますが、継続性や累積購入金額などの数値は明らかに良くなっています。改善を繰り返すことで、継続的に数値が上がることも確認しています。これはわれわれが持っていたマーケティングのノウハウだけではできなかったことです」と確かな手応えを感じている。AIが「Attenirと相性のいい人」を見事に見つけてきてくれたわけだ。

システムにまつわる作業がほとんどないこともメリットだという。実装は、Webサイト上での機能やページごとにタグを組み込むだけでよい。既存のログ収集システムやCRMシステムとのつなぎ込みなどは発生せず、タグから収集されるデータもAppier側のサーバで分析されるため、新しいシステム構築の資金投資、人的投資も必要ない。「始めやすかった」と新海氏は話す。

予測モデルの検証などはAppierのチームと共同で行っている。新海氏は、2年ほど前にさまざまなAIが出現した中で、Appierを採用した理由について「会社の成り立ちや創業者の取り組みや考え方を見て、AIのトップランナーだと信じられた」ことを挙げる。共同して取り組みを進め、実際に効果を確認できたことで、その思いはますます強くなったという。

「ターゲティング精度が高くても、時代によってミスマッチは起こります。常にブラッシュアップをかけていくことが重要で、AIはそこで大きな役に立ちます。とはいえ、なぜAIがそう判断したかは外からはわかりません。人間とAIをどう橋渡ししていくかは、マーケティング担当者や分析担当者の力が問われる部分です。入口を低くするのか、LTVを高くするのかは、AIに与える変数によって変わってきます。そのさじ加減は、いろいろなトライアルでしかでてこないと思って取り組んでいます」(新海氏)

  • Cross Xの高ライフタイムバリュー顧客を獲得する機能の仕組み

アジア圏の企業に向けてソリューション展開を本格化

一方、Appierが提供する「AIXON」には、予測を行った理由を提示する機能がある。だが、CrossXには、そうした機能はなく、新海氏のいうように、日々のマーケティングのなかでの仮説と検証が重要になる。そうした仮説と検証を行う際に、Appierが持つ世界規模でのユーザーベースは大きな力になったという。

「われわれのWebサイトではなく、広告をクリックして他のWebサイトで買った人もいるはずです。そうした購買行動のパターンをAppierのデータベースから探して、AIに変数として組み込むことができないか。Appierの担当者とそうした仮説の出し合いを何度も行って、学習スコープを変えながら検証を進めてきました。そうしたやりとりを熱心に行っていただけることも、Appierの魅力の1つだと思います」(新海氏)

新海氏とAppierの仮説と検証の結果は、CrossXの新機能にソリューションとして組みこまれている。それが「ディープファネルの最適化機能(LTVの高いユーザーの行動パターンをAIが個別に分析・抽出する機能)」や「クロスデバイスターゲティング機能(メディアやデバイスを横断し「人」に対して最適な広告配信を実施する機能)」だ。

Appierによると、アテニアの「最初から長くお付き合いしてくれそうな人を見つける」取り組みは、Appierが本拠を構える台湾をはじめ、アジア圏の多くの企業が課題に感じてはじめていることだという。

また、アテニアでも、取り組みを強化していく。これまでの2年間での検証では、リピートされやすく継続的な変化が見極めやすいスキンケア商品だけを対象にしてきた。効果を確認できたことで、今後は現在のLTVの高い顧客を獲得できるターゲティング精度の強みを生かしつつ、さらなる獲得効率向上の取組みを進めていく予定だ。