東北大学は、「冷たい降着流」と呼ばれるガスの流入に着目して天の川銀河の進化をコンピュータで計算し、天の川銀河での星形成が2段階に分けて起こったことを明らにしたことを発表した。

この成果は、東北大大学院理学研究科の野口正史准教授によるもので、7月26日付けで英国の科学誌「Nature」オンライン版で公開される。

野口准教授による天の川銀河の進化の想像図

野口准教授による天の川銀河の進化の想像図(出所:東北大ニュースリリース※PDF)

「冷たい降着流」とは、宇宙空間のガスが低温のまま銀河に流れ込む現象であるのに対し、一度高温になったガスが冷えるにつれ流入する過程は「冷却流」と呼ばれる。野口准教授によると、天の川銀河では最初に「冷たい降着流」によって星が作られ始め、約70億年前に星形成は終了した。これは衝撃波が発生してガスが高温になり流入が止まったためだという、その後「冷却流」が発生し、約50億年前から第二段目の星形成が始まり、太陽もこの時期に誕生したとされる。天の川銀河には、元素組成の異なる2種類の星が存在するが、その理由は不明であった。

野口准教授は「冷たい降着流」を理論モデルに組み込み、100億年にわたる天の川銀河の進化を詳しく計算した。それによると、まず「冷たい降着流」によって約100億年前から第一段階の星形成が始まり、30億年程続く。 その後、衝撃波が発生しガスが高温になるためガスの供給が止まり、20億年ほど星形成は中断する。そして高温ガスからエネルギーが失われるにつれ「冷却流」による第二段階の星形成が始まり、これが現在も続いていると考えられ、太陽も第二段階にできた星であると説明している。

  • 天の川銀河の異なる場所における星の元素組成分布

    天の川銀河の異なる場所における星の元素組成分布(出所:東北大ニュースリリース※PDF)

「冷たい降着流」に続く星形成の中断は、他の研究者によって予想されていたが、実際に天の川銀河で2段階にわたっての星形成が起きたことが確認されたのは、今回が初めてのことだ。

この計算により、酸素やマグネシウムに富む星は「冷たい降着流」による第一段階の星形成で、鉄に富む星は「冷却流」による第二段階の星形成で誕生したことが明らかとなった。このことで、これまで謎となっていた星の元素組成の起源も説明ができ、天の川銀河の形成に関する新しい考え方 を提供するものとして期待される。