クラウド・コンテンツマネジメント・プラットフォーム「Box」を提供する米Box。独自のビジネスモデルで市場開拓を進めてきた同社だが、セキュアなデータ保存として存在感を増している。

同社は2017年には、グローバルで前年比30%増の売り上げを達成している。これらの要因として営業支援AI(人工知能)やユニークな社内制度の改革、ダイバーシティへの取り組みなどの社内変革の推進が挙げられる。

今回、米Box SVP兼最高マーケティング責任者のキャリー・パリン氏に米国本社の取り組み、Box Japan 日本法人取締役社長の古市克典氏には国内におけるビジネスの概況について、それぞれ話を聞いた。

--売上拡大の要因に営業支援AIの「Conversica(コンバーシカ)」が寄与していると聞きました。どのようなソリューションでしょうか?

パリン氏:Conversicaは、シリコンバレーのスタートアップ企業のConversicaが提供する自然言語のAIを活用したソリューション。われわれは。セールスレップ(営業の代理)として導入した。なぜ導入したかと言えば、未開拓の市場は無限にあり、それらすべてに対応していくには人員の不足が否めないからだ。

  • 米Box SVP兼最高マーケティング責任者のキャリー・パリン氏

    米Box SVP兼最高マーケティング責任者のキャリー・パリン氏

われわれではConversicaを“バーチャルセールスレップ”と呼んでおり、例えば何らかの形でリードが流入してきた初期段階において、あたかも人間であるかのようにEメールを送付する。Conversicaは女性であり、人間のような振る舞いをするため見込み客は本当に人間なのではないかと感じてしまうことがあり、これは自然言語処理が優れていることの証左だろう。

見込み客に対して、インパクト起こすまでの時間を短縮することは重要なため、われわれのコンテンツに触れた瞬間にアプローチすることが肝要だ。Conversicaを使えばデジタルな形でものの数分で何千、何万ものエンゲージを開始することが可能なことから、営業部隊の前面に立つデジタルプラットフォームとして有効に機能している。

実際に、見込み客からアクションがあれば、人間の営業担当者が対応する。これにより、リードのクオリティが高まり、人間が対応する際には、つつがなく話をすることができる。

--日本での展開は考えていますか?

パリン氏:日本語対応した際には速やかに展開したいと考えている。Conversicaの機能は役に立ち、マーケティングからセールスにリードを引き渡す際のクオリティが高まるほか、インパクトのタイミングを増大できる。

現状では年間で数十万もの見込み客に触れており、なんらかな形でパイプラインの前に触れてくる顧客もコンバージョンレートは高い。

--「失敗を評価する制度」を設け、イノベーションを加速しているとのことですが、どのような取り組みですか?

パリン氏:われわれは企業価値として“失敗し、次につなげる”ということを重要視している。シリコンバレーで活躍する多くの人たちは完璧主義者に近く、このような状況下において、われわれは高速に革新性を起こす必要性がある。

そのため“失敗しても大丈夫だ”という企業文化を醸成しなければ、迅速に動けないと考えている。と言うのも完璧にできなければ、なにも立ち上げたくないと考えると、スピード感が削ぎ落とされてしまうことから、スピードを担保するためには失敗してもよいという文化が必要だった。

このような企業理念に基づき、マーケティング部門では「Failing fast award(速やかに失敗したで賞)」を設け、失敗談を社員の前でプレゼンテーションし、毎月表彰している。新しいことを試した上で失敗してもよいということをマーケティング部門だけでなく、その経験を全社で共有すれば同じ轍は踏まないということを学び、次につなげることが可能だ。

また、わたしがBoxに入社した際はマーケティング部門の変革を依頼された。大々的な変革を全社員で行うには困難も伴うため、失敗する勇気を持ってもらうことが重要であると考えた。失敗が許され、敬意を払うということを組織として見せていくことが重要であり、会社としての体制や姿勢、賞を設けることで以前と比べて迅速かつ、短期的に変革を遂げることができた。

--日本企業の場合、このような取り組みはなにかと問題になる可能性もありますが、社員の方たちは受け入れてますか?

パリン氏:自信を持って取り組んでいる。アーロン・レヴィCEOも迅速に革新したいと考えている。しかし、可能な限り速やかに取り組めば100%成功するかと言えば、そうではない場合もあると認識している。

また、シリコンバレーの企業で全員が同じメンタリティを持っているわけではないため、これらの取り組みはユニークであるポイントだと感じている。そして、このような取り組みにより、優秀な人材が組織にとどまれば、本当の意味で失敗することが受け入れられ、貴ばれている文化がある、ということの証拠なのではないだろうか。