北海道大学(北大)は、同大らの研究グループが、北海道芦別市から発見された脊椎骨の化石を分析し、この化石がティラノサウルス上科のものに類似していることを発見したと発表した。

この成果は、北大総合博物館の小林快次准教授、同大学院理学院修士課程の鈴木花氏、三笠市立博物館の加納学館長らの研究グループによるもので、6月23日に東北大学で開催される日本古生物学会2018年年会にて発表される。

  • 発見された恐竜の尾椎骨化石(A.背面観、B.後面観、C.右側面観、D.前面観、E.腹面観)(出所:北大ニュースリリース)

    発見された恐竜の尾椎骨化石(A.背面観、B.後面観、C.右側面観、D.前面観、E.腹面観)(出所:北大ニュースリリース)

北海道芦別市に分布する蝦夷層群羽幌川層からは、サメの仲間である板鰓類や二枚貝化石を多産する厚さ50cm程の砂岩層(コニアシアン後期)が報告されている。2016年、アマチュア化石愛好者の小川英敏氏がこの層から脊椎骨の椎体(椎骨のうち円柱形をしている部分)1個を発見した。北大大学院生の鈴木氏を中心に、北大と三笠市立博物館は、この化石の部位と分類群の同定を外部形態比較とCTスキャンによる内部構造の分析により行った。

椎体の腹側に血道弓の関節面があり、椎体の両側面の背側には横突起の基部が残っていることから、この標本は尾椎骨の椎体であり、尾の中間付近の椎体であると同定した。CTデータによると、海綿骨の密度と皮質骨の厚さ、骨梁の太さから、陸に棲む脊椎動物の椎体であると考えられた。また、内部の空洞や椎体が糸巻状であることから、恐竜類獣脚類と呼ばれる分類群のものであると同定した。標本は全長89mmあり、中型以上の獣脚類と考えられる。

化石発見場所の位置図(出所:北大ニュースリリース)

化石発見場所の位置図(出所:北大ニュースリリース)

まず、この標本の高さと長さの比率(H/L比)が0.63と前後に長いことから、テリジノサウルス類とオヴィラプトロサウルス類が除外され、前後の関節面の縁が丸みを帯びている形質はオルニトミモサウルス類とも異なる。標本は両凹型椎骨であり、両関節面が平らな4ドロマエオサウルス科とも合致しなかった。

一方、ティラノサウルス上科の尾椎との比較では,形態(H/L比、関節面の丸い縁、両凹型椎骨、深い前関節面)がほぼ一致した。このことから、恐竜類獣脚類の尾椎骨の椎体であることが同定され、体長6メートルほどの中型のティラノサウルス類のものである可能性が高いことが明らかになった。

今回、化石が発見された白亜紀後期コニアシアンは、世界的にティラノサウルス類の化石記録が限られている。この時代は、当初は小型だったティラノサウルス類が巨大化していく空白の時代であることから、今後の調査で追加標本が発見された場合、ティラノサウルス類の巨大化の謎に迫る鍵になることが期待されるとしている。

  • ティラノサウルス類の復元画/(c)服部雅人氏(出所:北大ニュースリリース)

    ティラノサウルス類の復元画/(c)服部雅人氏(出所:北大ニュースリリース)