KDDI総合研究所は6月19日、IoT技術の活用による漁業の効率化に資するため従来のスマートブイと比較して軽量化・省電力化した新型のスマートブイを開発したと発表した。
新型スマートブイは、従来のLTEに加え、IoT向けの無線通信方式であるLPWA(Low Power Wide Area)対応の通信モジュールも搭載可能となっており、6月から宮城県石巻湾漁場(宮城県東松島市)で実用化に向けて、センサデータ取得やスマートブイの連続動作実現の実証実験を開始。
同研究所は、各種センサや通信機能を搭載したスマートブイを用いて漁獲量の予測を実現し、効果的な出漁判断などによる漁業の効率を目指したスマート漁業の研究を総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「局所的海洋データを活用した漁業の効率化の研究開発」の一環として取り組んでおり、2016年10月より宮城県石巻湾漁場において実証実験を行っている。
これまで、漁獲量の実績データとスマートブイで得られるセンサデータや周辺の気象データを組み合わせて分析することで、おおまかな漁獲量予測が可能としていた一方で、従来のスマートブイでは搭載している一次電池の寿命が約1カ月と定期的な電池交換作業が必要で重量が20kg以上となり、ブイ運用に関する作業負担が大きいことが課題となっていた。
また、従来のスマートブイは1台で複数の多様なセンサ(水温・水圧、塩分濃度、潮流など)を搭載しているが、構造的な複雑さや頻繁な清掃の必要性などの面で、メンテナンス性にも課題があったほか、これまでの実証実験で得られた結果から、水深が異なる位置に対応した複数の水温センサだけで、漁獲量を十分予測できることが判明したという。
今回、開発した新型スマートブイは浸水による発火の危険性が少ない二次電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)とソーラーパネルを組み合わせて利用し、電池交換などのメンテナンス不要で1年間の連続動作実現を目指している。
さらに、搭載するセンサは漁獲量予測に寄与すると考えられる多層の水温測定が可能な水温センサに加え、塩分や溶存酸素など、さまざまなセンサを目的に応じて交換・接続することも可能(接続できるのは1種類のみ)とし、重量は従来型スマートブイの50%程度に軽量化。これらにより、従来型のスマートブイと比較して運用性が向上し、効果的な長期間データ取得を可能としているという。
加えて、内部の通信モジュールの交換により、省電力で広範囲の通信可能範囲を有するセルラーLPWAの一種であるLTE-M(Cat.M1)や、従来のLTE通信よりも低消費電力化を実現しているLTE Cat.1など複数の通信方式に対応しており、スマートブイからクラウド上のデータベースに直接データを蓄積できる仕組みを搭載。
今後、実証実験を通じて取得したセンサデータや連続動作のデータを検証し、漁獲量予測への活用を予定している。