ルネサス エレクトロニクスは、車載制御用マルチコアマイコンのモデルベース開発環境「Embedded Target for RH850 Multicore」をアップデートして、複数の制御周期(マルチレート)を持つシステム開発に新たに対応したことを発表した。

  • エンジン用マルチレート制御のマルチコア動作

    エンジン用マルチレート制御のマルチコア動作

今回のアップデートにより、マルチコアマイコンのソフトウェア開発シーンでも、モデルベース開発環境が実用的になり、自動運転車の開発などで複雑化するソフトウェアの開発負荷を大幅に軽減できるようになる。従来、RH850マルチコア用モデルベース開発環境は、複数のコアに自動でソフトウェアを割り当て、実行性能をシミュレーションで検証していたが、マルチレート制御を含む複雑なシステムではすべて実機に実装して検証する必要があった。

今回対応したマルチレート制御の一例として、エンジン制御の吸排気の周期、燃料の噴射や点火の周期、車体の状態を確認する周期がそれぞれ異なることが挙げられる。エンジン制御のような複数の周期を含むモデルからも、マルチコア用コードを直接生成できるようになり、開発の初期段階からマルチコアマイコンでのモデルの実行性能を見積ることで、開発期間を大幅に短縮可能だという。また、車載モデルベース開発のデファクト標準JMAAB(Japan MBD Automotive Advisory Board)制御モデリングガイドラインに準拠しており、これにより、OSなしのマルチレート・シングルタスク方式に則って、コア指定や同期をSimulinkモデルに表現し、RH850用のマルチコア向けコードを自動生成して確定的な動作を実現しているという。さらに、マルチレート制御に対応したことにより、制御周期の異なる小規模なシステムをマルチコアで動作させることが容易になるため、複数のシステムを統合したECU(Electronic Control Unit)全体の動作検証も可能となっている。

同開発環境は、2018年秋には2コア搭載のRH850/P1H-Cに対応予定で、最大6コア搭載のRH850/E2xシリーズにも順次対応するほか、車載用SoC「R-Car」ファミリを含むRenesas autonomyプラットフォーム全般への展開も計画されている。さらに今後は、車載用で培ったモデルベース設計のノウハウを、複雑化、大規模化が進む産業分野に向けて拡充を続ける「RXファミリ」にも応用し、ソフトウェア開発の効率化に貢献していくという。

なお、このアップデートしたモデルベース開発環境「Embedded Target for RH850 Multicore」は、2018年秋からの提供が予定されている。これに先駆けて、7月3日に東京コンファレンスセンター・品川で開催される「MathWorks Automotive Conference 2018」にデモンストレーションが出展されるということだ。