工場やインフラ施設で必ず必要になるのが、設備の監視、点検だ。最近ではIoT機器を組み込むことで状態や異常を検知する設備が多くなっている。だが、やはり人の目視によるチェックは欠かせない。組み込んだIoT機器すら障害が発生する可能性があるからだ。

目視によるチェックは姿を変えてきた。古くは紙の仕様書やチェック項目を列記した書類を持ち、それに従って点検してきた。近年はパソコンになり、そしてタブレット端末に移行している。ただ、これらには難がある。紙書類やタブレットでは、片手がふさがってしまい、作業がしにくいという点だ。

目視によるチェックに変革

そうした作業に終止符を打つ機器が注目され始めた。「Mixed Reality」(複合現実、以下、MR)という技術を使った機器だ。

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった語句なら聞いたことがあるだろう。しかし、MRはあまり聞き慣れない言葉だ。MRは、ARをさらに発展させたものといえるだろう。「Pokémon GO」を楽しんだことがある方ならわかるだろうが、ARの場合、スマホに移った現実世界にポケモンの姿が現れる。つまり、スマホの中でしか拡張現実は展開されない。

記者発表会が行われた東京電力本社

一方、MRは自分が目視している視界に拡張現実を投影できる。たとえば、MR対応のヘッドマウントディスプレを使えば、実際の視界のなかに各種情報が映し出される。SF映画やアニメなどでたびたび出てくるような、近未来的なシステムだ。

そうしたMR技術を用いて、インフラ設備の点検・整備に活用しようという企業がある。東京電力だ。