人間の知的活動から生まれた製品には、知的財産権が生ずる。これは、著作権や特許権、実用新案権、意匠権、商標権など、知的財産の種類によって各法律で守られるというものだ。直近では、マンガを無料で読める「漫画村」や、アニメ動画を無断配信する「AniTube」といったサイトが閉鎖された。これは、著作権に配慮した対処だが、インターネットというブラック・グレーゾーンを併せ持つ特性が生み出した闇だ。

MTG 法務知的財産本部 知的財産部 ブランド保護課 林正克氏

一方、MTGが直面する問題は、製品の「丸コピー」。パッケージから説明書までも模倣するもので、特許権や実用新案権、意匠権といったところで問題となってくる。

MTG 法務知的財産本部 知的財産部 ブランド保護課 林正克氏は、「模倣品には2つのパターンがあり、ひとつはパッケージや製品の形状は違うものの、機能を模倣するタイプ。もう一方は、製品の形状やパッケージ、説明書までをも“丸コピー”するタイプ」だという。後者は特に悪質で、メーカーとしては見逃せないとのことだ。

模倣品の闇は中国にはびこる

では、こうした丸コピー品がなぜ、そしてどこから出てくるのか。まず出所は中国だ。財務省がまとめた「平成29年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」の資料によると、平成14年頃は韓国製のコピー商品が7割を超えていたが、平成29年には中国製のコピー製品が9割以上を占めている。

なぜ、中国製のコピー製品が多いのか。それは、中国に強いブランドがないからだとMTGの林氏は指摘する。ブランド力がなければグローバルな市場では通用しない。ならば、すでにブランドを確立している製品の丸コピーにすれば、手っ取り早く商売につながるというわけだ。

歴史的な経緯もある。日本企業は人件費が安価な中国にこぞって生産拠点を移した。だが、中国での人件費が高騰すると、生産拠点を日本に戻したりベトナムに移したりといった動きになった。結果、日本企業の進出で技術を学んだが、思うように収入が得られないといった状況が起こる。そうした人たちの一部が、模倣品に手を染めているともいわれている。また、近年は3Dプリンターの普及により、製品をコピーしやすくなっているという背景もある。

ただ、中国にもブランドが育ちつつある。ところが、そのブランドすら自国の闇がコピーする。グローバルで信頼されるブランドを育てるには模倣品は悪でしかなく、中国当局も対策に力を入れている。