ブラザー工業は2月22日、産業/商用施設向け燃料電池市場に正式に参入することを表明。その第一弾として出力4.4kWモデル「BFC4-5000-DC380V」の受注を2月28日より開始すると発表した。
水を電気分解して得ることができる水素の活用が、低炭素社会の実現に向けて期待されるところだが、燃料電池車やエネファームのような家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなど、一部で活用されるに留まっており、その普及には産業分野で活用される必要がある。
同製品は、そうした産業分野向けに開発されたもので、「高い安全性」「高い安定性」「IoTへの対応」といった3つの特徴を有する。1つ目の高い安全性としては、安全性を追求した製品設計に金属配管や高信頼性部品を組み合わせることで、燃料電池の外へ水素を漏らさないことを実現したほか、万が一、漏れた場合も、水素センサや圧力センサにより水素漏れを検知、システムの停止を可能としているほか、空調ファンを搭載することで、配管が破断した場合でも、そこに水素を溜めない工夫も施されている。
2つ目の高い安定性としては、燃料電池は水素と酸素をセルスタックで反応させ、水と電気を生み出すが、内部の温度は60~70℃程度と高くなるため水蒸気も発生する。水素も100%反応できるわけではなく、一部は水と一緒に排出されることとなるが、同製品では、「気液分離」の構造を採用することで、気体(水素)と液体(水)を分離し、かつ、そうして分離・回収した水素を再びセルスタックに送り込むことで再利用させる水素循環システムを搭載。これにより、水素貯蔵タンクに蓄えられている水素のうち99%をセルスタックにて反応させることが可能となり、同等サイズの競合製品と比べて2倍の電流量を発電することができるほか、72時間以上安定した発電を継続して行うことを可能としたという。
また、固体高分子(PEFC)方式を採用しており、応答性も早い。そのため、エアコンや掃除機など、電力消費量が高い機器が稼動した際にも、蓄電池不要で素早く応答し、電力を供給しつづけることができるようになっている。
3つ目となるIoTへの対応としては、モニタリングサービスを提供。これにより、遠隔地から、燃料の状況や発電状況などを確認することができるようになり、維持管理のための負担を軽減することが出来るようになっているとする。
なおブラザーでは、燃料電池事業を次の30年に向けた新事業と位置づけており、2025年度末に200億円の売り上げ規模を目指すとしている。そのため、第1弾製品のターゲット市場を通信インフラや交通インフラのバックアップ電源とするが、多様なニーズな市場が見込まれるため、2018年度中に第2弾製品の発表を予定しているとするほか、第3弾製品の発表も同年度内に行う可能性もあるとしている。