エイチ・アイ・エスと日本通信は2月15日、共同で合弁会社「H.I.S. Mobile株式会社」を設立し、MVNO事業に参入することを発表した。5月初旬をめどに国内初の海外旅行者向け格安SIMはどのような仕組みで実現しているのだろうか。

  • エイチ・アイ・エスと日本通信が合弁会社「H.I.S. Mobile株式会社」を設立

70カ国で利用可能に

H.I.S. Mobileは発表と同日から国内向けの格安SIMの販売を開始しているが、これらは基本的に日本通信が販売している「b-mobile」のサービスに近い形態の料金プランに近いものばかり。ドコモ回線に加えてソフトバンク回線が選択できるのが特徴的だが、MVNOとしては平均的なタイプだ。

  • 主力となる「きままベストチョイスプラン」は音声付きで月額945円〜(税別)と、一般的なMVNOと渡り合うに十分な低価格だ

  • 国内向けサービスは先着1万名に限り割引キャンペーンも実施されている

H.I.S. Mobileの真骨頂は国内向けサービスではなく、5月1日にスタートする予定の海外向けサービスだ。今回の発表ではまだ詳細を調整中ということだったが、金額は1日500円。サービス開始時で、日本人の利用が多い上位70程度の国や地域で利用できるという(海外から日本へ訪れる、いわゆるインバウンド向けサービスは将来展開予定)。

  • 当面は70カ国ということだが、日本人が利用する上位20国はほぼ抑えているとのこと。また中国からのGoogleサービスの利用なども今の所問題がないとしていた

基本的に利用する国でアクティベーションするごとに500円かかることになるため、トランジット(経由地)でアクティベーションすると500円、さらに到着地でアクティベーションすると追加で500円かかることになる。3Gサービスは含まれず、純粋に4G LTEでのみのサービスになる見込みだ。音声通話などについては「LINEなどを使ってもらえばいい」(H.I.S. Mobileの猪腰社長)という、かなり割り切ったスタイルになる。

このサービスで利用するSIMは一般的なプラスチック製のSIMではあるが、各国のサービス向けに内容が書き換えられるタイプのもので、利用したい国でアプリを起動して操作することでその国用の設定に切り替える。ただし日本向けの設定は入っていないようで、当面は日本用のSIMと海外用のSIMを入れ替えて使う(機種によってはデュアルSIM)ことになる。また、このとき利用するアプリもSIMに組み込まれている(後述)。

  • 専用アプリで国を選択して設定を切り替える。なお書くスマホ用OSのアプリと、SIMカード上のアプリはまた別の扱いになる模様

既存のキャリアの海外ローミングと比較すると、KDDIの「世界データ定額」や、ドコモが3月15日からスタートする「パケットパック海外オプション」が1日980円。これらのサービスが日本で契約したデータ容量を消費するのに対し、H.I.S. Mobileの場合は200MB程度を利用できるようだ。

最近は海外での利用についてはキャリアも力を入れ始めたために、インパクトはあまり大きくなくなってしまったが、従来のデータ無制限のローミングは1日2980円程度かかっていたので、そちらと比べると差は歴然としている。また、通常の利用額も安いMVNOで安価に海外利用もできるということであれば、海外渡航の機会が多いユーザーには強く訴求するだろう。