ヤンマーは2月7日、リモートセンシングや土壌診断など、同社独自の営農・栽培支援を利用した酒米栽培のソリューションを2018年4月から提供開始すると発表した。

  • 酒米の収穫風景

    酒米の収穫風景

同ソリューションを活用した第1弾として、沢の鶴がヤンマーの酒米ソリューションで生産した酒米を使用した純米大吟醸酒「沢の鶴 X01」を販売する。

酒米ソリューションの要点としては「酒米契約栽培による日本酒メーカーとの販路マッチング」「酒米(種子)の研究開発」「営農・栽培支援の利用」という3点を挙げる。

販路マッチングに関しては、今回、実需者である沢の鶴と生産者をマッチングし、需要に応じた酒米の生産を実現。品種・面積・価格条件を播種前契約し、生産者の安定経営と実需者の安定的な仕入を可能とするほか、農家に対して主食米から酒米(加工米)への生産転換を提案することで、水田を無駄なく利用し、生産者の所得向上に貢献するという。

  • ヤンマーが提供する酒米ソリューションの流れ

    ヤンマーが提供する酒米ソリューションの流れ

酒米(種子)の研究開発では、沢の鶴が求める品質の日本酒を造るため、ヤンマーの研究施設であるバイオイノベーションセンター倉敷ラボにて開発中の酒米候補となる系統の選定・評価を行った。名古屋大学との共同研究において、米の形状特性や生育特性、精米などの加工適性試験を実施し、沢の鶴による酒造適正評価や試験醸造などを経て、条件を満たした酒米で今回の日本酒を醸造した。

今後は、ヤンマーのイノベーション技術を利用して生産農家が抱える既存の酒米生産における問題点を解決するとともに、単独品種で新たな日本酒への採用などを目指し、酒造現場のニーズに応えられる低コスト・高品質を実現する酒造好適米の開発を加速していく。

営農・栽培支援の利用に関しては、酒造りに求められる原料米の品質をヤンマーのテクノロジーで解決する。ドローンを利用したリモートセンシングによる生育状況の可視化と改善策の提案や、作業日報や機械の稼動管理が可能な営農支援ツールである「スマートアシストリモート」など、ICT農業を取り入れた栽培管理の最適化で農作業の効率化を図る。

また、稲作に必要な資材費や農作業時間の短縮などコスト削減につながる田植えの技術「密苗」など、省力化・低コスト化技術の導入による再生産可能な営農を提案する。さらに、酒造りに求められる米の品質基準を達成するため、土壌診断による圃場に最適な施肥設計を行い、最適な栽培サポートを実施。これにより、収量の安定・品質の向上・資材(肥料)の削減に貢献するとしている。

沢の鶴が発売する沢の鶴 X01は、同社の要望に合わせて同ソリューションで生産した独自の酒米を100%使用し、醸造した。ボトルデザインはヤンマーのデザイン戦略室が担当し、沢の鶴が純米酒に付する「※(こめじるし)」とヤンマーのエンジン銘板をイメージしたチャームで両社による取り組みを表現した。4000本の数量限定商品であり、180mlで参考小売価格は1500円(税別)。2月26日から一般点灯で販売開始する。

  • 沢の鶴 X01

    沢の鶴 X01