シンガポールに拠点を構え、アジアでネットワーク広告事業を展開するAdAsia Holdingsは1月11日、タイ・バンコクで会見を開き、AdAsia Holdingsの親会社をAnyMind Groupにすると発表した。事業拡大に伴う組織変更で、実質的な社名変更となる。

組織変更に伴い、グループ傘下には各事業体として、アドネットワーク・ソリューションを提供する「AdAsia」、インフルエンサー・マーケティング・サービスを提供する「CastingAsia」、リクルーティング事業を手掛ける「TalentMind」を擁することになる。

社名変更の理由についてAnyMind Group共同創業者兼CEOの十河 宏輔氏は、「われわれはネット広告プラットフォーム開発/提供からスタートしたが、今後はAI(人工知能)を活用したソリューションを、(アド=広告だけでなく)あらゆる業界に技術を提供していくことを意味したものだ」と説明した。

事例の一つが、リクルーティング・ソリューション・サービスである「TalentMind」だ。人材募集をした企業に対して、候補者の中から最適な人材を自動的に提示するサービスを目指す。TalentMindの事業統括責任者である近藤聖氏は、「これまでのマッチング技術では限界があった候補者の絞り込みを、機械学習/AIを利用して効率的かつ効果的に実行できるサービスだ」としている。

  • AnyMind Group共同創業者兼CEOの十河宏輔氏

  • TalentMindの事業統括責任者務める近藤聖氏

TalentMindでは、応募者の履歴書や登録者が利用している各SNS(Social Networking Service)、プリセットの質問に対する回答、業務遂行能力の高い人物に共通する行動特性(コンピテンシー)を分析する。そのうえで、募集するポジションに対して最適な候補者を、独自のアルゴリズムでスコアリングして人材募集企業に提示する。データから応募者の絞り込みをすることで、属人的なバイアスがかかることなく、人材の"タレント"を判断する。

近藤氏は、「履歴書的に"優秀な"人材と、採用企業にとって"必要な"人材は必ずしも一致しない。TalentMindは人材募集をした企業の既存社員の特性やパフォーマンス、コンピテンシーを基に人材をグルーピングし、その企業にとって理想的な人材を可視化する。同データを基に採用活動を行えば、人材のミスマッチを低減し、効率的な採用活動が可能だ」と語る。

  • TalentMindの具体的な仕組み(出典:AnyMind Group)

TalentMindは「スクリーニング」「アナリティクス」「スコアリング」「マッチング」の4段階に分けて、順次サービスを提供していくという。

スクリーニングは、候補者のデータ分析結果から、採用担当者がどのような職種に対しても最適な候補者を探し出せる機械学習機能を提供する。一方でアナリティクスは、企業ごとに求める候補者像を可視化し、機械学習によって独自の採用モデルを構築する。

さらに、スコアリングでは、SNSなどのオープンデータから優秀な人材の情報を取得し、AIを使って最適な候補者をレコメンドする。TalentMindプラットフォーム上に蓄積されたデータや、これまでの分析情報を相関分析することで、マッチングの精度も向上するというわけだ。近藤氏は「2018年末までにマッチングまでのサービスを提供したい」としている。

主な想定利用業界は、人材の流動性が高く、多様な人材の起用を重視するインターネット業界だ。近藤氏は、「ITによる業務効率化が注目されているが、人材採用はデータ活用ができていないのが現状であり、採用は従業員の(作業)コストもかかる。TalentMindを活用することで、スピーディな採用とコスト削減が可能になる」述べた。

なお、データ分析の一部にIBMのWatson API(Application Programming Interface)を利用している。最初はタイからサービスをスタートし、同社が拠点を構える9カ国に順次展開していく予定だとのことだ。