ダークエネルギーに関する国際研究プロジェクト「ダークエネルギーサーベイ(DES)」は、2013年に開始した調査活動の最初の3年分の観測データを一般公開した。数十億光年先にある遠方の銀河から、私たちの天の川銀河内の恒星まで、約4億個の天体に関するデータが含まれている。データは宇宙を加速膨張させている正体不明の力であるダークエネルギーについての研究に役立てられる。

  • ブランコ望遠鏡(チリ)に設置されたダークエネルギーカメラ(出所:フェルミ国立加速器研究所)

    ブランコ望遠鏡(チリ)に設置されたダークエネルギーカメラ(出所:フェルミ国立加速器研究所)

今回公開されたデータは全天の1/8の広さ(5000平方度)があり、セロ・トロロ汎米天文台(チリ)のブランコ望遠鏡(口径4m)に設置された「ダークエネルギーカメラ」で撮影された約4万枚の画像などを含んでいる。全画像のデータ容量は数百テラバイトあるという。

ダークエネルギーカメラは米国のフェルミ国立加速器研究所(FNAL)が建造し、撮影された画像のデータ処理はイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に拠点を置く米国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)のチームが行った。

収集されたデータは主にダークエネルギーの研究に利用されるが、それだけにとどまらず、広く一般に公開することでさまざまな天文学上の新発見が得られるものと期待されている。

ダークエネルギーカメラによる観測データから得られた発見の例として、天の川銀河内に11個の新しい恒星ストリームが見つかったことが挙げられている。

  • 今回公開された観測データがカバーしている全領域。新たに見つかった11個の恒星ストリームの位置が示されている。ATLAS、Molonglo、Phoenix、Tucana IIIの4本は既知の恒星ストリーム(出所:Dark Energy Survey)

    今回公開された観測データがカバーしている全領域。新たに見つかった11個の恒星ストリームの位置が示されている。ATLAS、Molonglo、Phoenix、Tucana IIIの4本は既知の恒星ストリーム(出所:Dark Energy Survey)

  • 筋状にみえているのが恒星ストリーム。一部は既知のもの(出所:Dark Energy Survey)

    筋状にみえているのが恒星ストリーム。一部は既知のもの(出所:Dark Energy Survey)

恒星ストリームはいくつもの恒星が銀河の周囲にループ状に集まって形成する構造物である。天の川銀河の周囲には、見えない重力源であるダークマターが暈のように広がって分布する「ダークマターハロー」が存在していると考えられており、天の川近傍の小銀河はこのダークマターハローによる引力の影響を受けるとされる。天の川はこれらの小銀河を引き寄せ、それらの一部を引きちぎって吸収することで成長し、恒星ストリームもこの過程で形成されると考えられている。

恒星ストリームは、広範囲に散らばった相対的に少数の恒星から形成されているため、見つけるのが難しい。高解像度のダークエネルギーカメラは、恒星ストリームのような構造物を見つけ出すのにも有効な観測手段であるという。恒星ストリームの分析によって、天の川におけるダークマターの存在量、分布、凝集についての詳しい情報が得られると期待されている。

NCSAのサイト上からデータにアクセスすることができる。DESでは調査終了時に残りのデータについても公開を計画しており、そのデータ量は今回の2倍近くになるとしている。