Amazon Web Servicesが11月27日から12月1日にわたり開催した年次イベント「AWS re:Invent 2017」では、さまざまな新サービスが発表された。今回、プロダクトマーケティングジェネラルマネージャを務めるLowell Anderson氏に個別インタビューする機会を得たので、同社の新サービスを網羅している同氏に、今回の発表でお薦めの3つのサービスを教えてもらった。AWSのサービスを使っているなら押さえておきたい。

  • Amazon Web Services プロダクトマーケティングジェネラルマネージャ Lowell Anderson氏

Anderson氏には、日本のユーザーが興味深いと思われるトピックに絞ってもらった。

IoTと機械学習

Anderson氏が最初に挙げたのはIoT関連のサービスと機械学習サービスだ。AWS IoTサービスは2年前に発表されたサービスで、すでに開発現場で使われている。今回はこのAWS IoTをさらに拡張する複数のサービスが発表された。

具体的には、AWS Lambdaのトリガーをワンクリックで構築する「AWS IoT 1-Click」、IoTデータの処理、強化、分析と可視化を行う「AWS IoT Analytics」、IoTデバイスのセキュリティ管理を行う「AWS IOT DEVICE DEFENDER」、デバイスで機械学習 (ML) モデルを実行する「AWS Greengrass ML Inference」などが発表された。AWS IoT Analyticsは、Jupyter Notebooksと連携し機械学習を持ち込むことも可能だ。

  • AWS IoT Anlyticsの画面

こうしたIoTサービスと機械学習関連のサービスを組み合わせることで、さまざまなことができると同氏は説明する。

例えば、交通渋滞データを収集し、機械学習モデルに入力して交通渋滞を予測した経路検索などの実現だ。信号機の動きや車の渋滞情報など、さまざまな情報を数年にわたって蓄積するとなると、クラウドプラットフォームと機械学習のようなモデルが必要になってくる。データの収集にはIoTデバイスとAWS IoTが利用できる。

こうした利用が進んでいる日本はAWS IoTと機械学習サービスの相性がよく、さまざまな新製品の開発が期待できるそうだ。

リージョンを超えてスケールする「DynamoDB Global Tables」

次に、Anderson氏はスタートアップというか小さいところから育てていくタイプのプロジェクトに合ったサービスとして、DynamoDBのGlobal Tables(グローバルテーブル)を挙げた。

DynamoDBは5年前に登場したサービスだが、今回このデータベースにGlobal Tablesという新機能が登場した。これは自動的に複数のリージョンで同期されるテーブル機能だ。

スタートアップやプロジェクトの最初の段階において、データベースはそう大きくならない。しかし開発を続けて成長を続け、事業も成功してくればデータベースは大きくなってくる。そうなるとリージョンを越えてサービスを提供する必要も出てくるわけ。そこで、DynamoDB Global Tablesを使えば、リージョンを超えてのスケーラビリティを実現できるというわけだ。スタートアップから世界レベルのサービスに成長するまで利用できるサービスだという。

  • DynamoDBでGlobal Tablesを追加する画面

翻訳と文字起こしを行う「Amazon Translate」「同 Transcribe」

3つ目のサービスとしては、「Amazon Transcribe」という音声データをテキストに変換するサービスと、翻訳を実施する「Amazon Translate」が紹介された。

Amazon Transcribeは英語とスペイン語、Amazon Translateは英語とアラビア語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、簡体字中国語、スペイン語の翻訳を実施するサービス。残念ながら発表の段階で日本語は含まれていないため、日本語のサポートは将来の話になると見られる。

翻訳はもちろんさまざまなシーンで必要になるが、音声をテキストデータに変換するシステムもさまざまなシーンで必要になる。複数の言語で電話がかかってくるコールセンターなんかは特にAmazon Transcribeの活躍するシーンだ。そのほか、音声データをテキストに落とし込めるとさまざまな作業を自動化できるようになる。

AWS re:Invent 2017で発表された新サービスはもちろんこれだけではなく、各セッションの発表も含めれば膨大なサービスが発表されたことになる。Anderson氏が紹介してくれたトピックは同イベントで発表された内容の一部でしかないが、どんな新サービスから調べていけばよいかのとっかかりにはなるだろう。

昨今、アプリケーションレイヤーのサービスが求められるようになってきているとともに、どのようなサービスが存在しているのかを知っていることがエンジニアやアーキテクトの実力になってきている。何かをきっかけに、自分の知らないサービスを調べてみることは悪くない投資だ。