NECは医療法人社団KNIとともに、生体情報をAIで解析することで、平均40分前に入院患者の不穏行動の71%検知することに成功したと発表した。今後は実証実験を続けて精度を高め、数年以内に実用化することを目指すという。

不穏行動とは、入院患者に起こり得る急性の錯乱状態で、幻覚妄想、感情不安定、混乱などを指す。がんの末期患者になどにみられるという。これにより、独り言、管いじり、徘徊、柵越えといった行動に現れ、最悪の場合、自殺にいたるケースもあるという。

不穏とは

不穏行動の発生率は、集中治療室で26~84%、挿管患者のみでは63~81.7%になるといい、この対応は、医療スタッフの業務時間の26%を占めるという。

不穏行動対応は、医療スタッフの業務時間の26%

NECではKNIと協力し、通常、病院側が取得するような生体情報をバイタルセンサーで集め、それをNECのAI「NEC the WISE」で解析することで自律神経のバランスを検知。一定のしきい値を越えた場合、病院スタッフに通知することで、不穏行動の予兆を71%の確率で成功した。

不穏の特徴は人ごとに異なるが、NECでは機械学習技術で高精度化を達成したという。

課題解決のポイント

KNIでは、ITやAIを利用して患者・家族への情報提供、生産性の向上(治療計画、予後予測と追跡、患者管制、セキュリティ、患者サービスの向上、療養環境制御(スヌーズレン)などを提供するDigital Hospitalを目指しており、今回のNECとの取り組みはその一環。

Digital Hospitalの実現に向けて

KNI 理事長 北原茂実氏は、「2030年に高齢化率は1/3となり、ひとり暮らしの高齢者は4割になる。それに必要な医療者は1000万人で、Digital Hospitalがなければ、2030年の医療を維持できない。今後、AI・ITにより医療を効率化していく必要がある」と話す。

記者会見の登壇者。左からNEC データサイエンス研究所 所長 山田昭雄氏、KNI 理事長 北原茂実氏、NEC 執行役員常務 中俣力氏

またNECでは、入院翌日までの情報を活用してAIで分析することで、退院先(自宅、回復期病院、療養病院)を84%の精度で予測。退院前にこれらを準備することで、患者の入院長期化の回避や早期の社会復帰、および対応するスタッフの業務負荷軽減、退院待ちの解消に役立たせことにより、新たな患者の受け入れが期待できるという。

退院先を事前に予測して早期に対応することで、退院待ちを解消

今後両者は、2017年12月に開院される北原リハビリテーション病院新棟(東京都八王子市)において、回復期病院の課題解決に向けて、今回の実証、およびAIを活用した更なる取り組みを行う。

中俣氏は、数年以内に製品化したいとした。