しかし一方で、もし楽天モバイルとFREETELのサービス統合が成功し、大規模な会員流出が起きなかった場合、楽天は今後、買収によってMVNOとしての規模拡大に力を入れるようになるかもしれない。

多くのMVNOは契約数を増やすため、赤字覚悟の先行投資でユーザー獲得を進めているが、現在は楽天のような大手MVNOや、大手キャリアのサブブランドが大規模な資金を投下して積極的にプロモーションを仕掛けるパワーゲームとなっており、競争環境は非常に厳しい。それゆえ今後、体力的に敵わず撤退するMVNOは増えていくと見られ、MVNOの中では企業体力があり、なおかつ通信事業の拡大に積極的な楽天が、今回の買収で実績を作り上げることができれば、そうしたMVNOの受け皿となると考えられそうだ。

だが撤退するMVNOに目を付けているのは、楽天だけではない可能性もある。例えば大手キャリアの一角を占めるKDDIは、“格安”市場への取り組みの出遅れから苦戦を強いられており、今年にはMVNO大手の一角を占めるビッグローブを買収している。それだけに、比較的規模の大きなMVNOを買収によって“仲間”とすることで巻き返しを図ろうとする可能性も、ないとは言い切れないだろう。

“格安”の市場で出遅れたKDDIはMVNOの買収にも積極的な姿勢を見せており、MVNOの大手の一角を占めるビッグローブも買収している

今回の楽天によるプラスワン・マーケティングの通信事業買収劇は、MVNOが参入企業を増やし育てる段階から、整理・淘汰が進む段階へと入りつつあることを、まさに表しているといえよう。MVNOへの流出に危機感を強めたキャリアとの争いも激しくなるだけに、今後はキャリアと大手MVNOを交えた再編劇が、注目されることになるかもしれない。