ダイキン工業と日立製作所は9月26日、IoTを利用して熟練技術者の技能伝承を支援する、次世代生産モデルの確立に向けた協創を2017年10月から開始すると発表した。両社は今回の共同実証を第1ステップとして、先進のIoTを用いてグローバル拠点が情報と技術を掛け合わせて協調する、次世代生産モデルの実現に向けた協創を進めていく。
ダイキンは、国内外の各拠点における品質の向上・平準化のため、空調機の製造に欠かせないと「いうろう付け」や「旋盤・板金加工」、「アーク溶接」などを基幹技能として、技術者の育成や熟練技能の伝承に長年にわたり取り組んできた。
一方の日立は、自ら製造業として培ってきた経験・ノウハウを基に、OT(Operational Technology、制御・運用技術)とITを融合した同社のIoTプラットフォームである「Lumada」や先進の研究開発を利用する製造現場のデジタル化により、モノづくりの力を高めるソリューションの創出に取り組んできた。
こうした中で日立は、現場作業員の逸脱動作や設備不具合の予兆を検出する画像解析技術を応用し、熟練技術者と訓練者の技能を定量的にデジタル化し比較・評価することで、熟練者の技能をより多くの技術者に効率的に伝承するための支援ができると考えたという。
ダイキンの協力を受け、空調機の製造におけるろう付けプロセスにおいて、作業者の動作や工具の使い方などをデジタル化・モデル化する検証を行ってきた。そして、ろう付けプロセスで収集したデータを4M(Man(人)、Machine(設備)、Material(材料)、Method(方法))の観点から解析し、それをいかにM(Method)に繋げていくかの検討を重ね、作業者の動作や現象のデジタル化・モデル化したシステムを、製造現場へ適用できる見通しを得たという。
両社はこれまでの検証を基に、熟練技術者と訓練者のろう付け作業の違いを定量的に評価・解析できる「ろう付け技能訓練支援システム」を構築し、2017年10月からダイキン滋賀製作所の製造現場へ導入し、共同で実証を開始する。
具体的には、まず、ろう付け熟練技術者の手の動きやトーチの角度・角速度、ろう材と母材の供給角度・距離・角速度などの動作や母材の温度変化をカメラやセンサーなどを用いて時系列に収集・デジタル化し、標準動作モデルを構築。同様に、訓練者がろう付け作業を行なう際、その動作や現象を収集・デジタル化することで、熟練技術者の標準動作モデルと統計的に比較するとしている。
訓練者は、熟練技術者を手本としたろう付け作業の定量的な評価が可能となり、より短期間での技能習得や作業の標準化・レベル向上を図ることができるという。
今回の共同実証で得た成果をベースに両社は、ろう付け作業の統一基準を定めてグローバル生産拠点に展開すると共に、監視制御システムや生産設備の情報と統合して解析することで、さらなる品質改善や生産性向上、熟練技術者の育成に繋げていく計画だという。 また、今後はダイキンの他の製造工程や国内外の工場への適用拡大を目指すとしている。