Veritas Technologiesは9月18日から20日まで、米ラスベガスで年次イベント「Veritas Vision 2017」を開催している。同イベントの開催はSymantecから分社後2回目となり、CEOのBill Coleman氏は1年前に打ち出した「360度データ管理」戦略を着実に実現していることをアピール、マルチクラウドにおけるMicrosoftとの提携、主力のバックアップ製品「NetBackup」の最新版などを発表した。

データから真実を見つけるべき

Veritasは2016年初めにSymantecから分社化して発足した情報管理製品を展開するベンダーだ。だがその歴史は古く、1989年に遡る(前進のTolerant Systems時代を入れると、34年のベテラン選手だ)。

分社後の新生Veritasを率いるBill Coleman氏は、世界50カ国以上から集まった2000人の顧客やパートナーを前に、「データから真実を見つけること」を支援すると約束する。なお、Veritasはラテン語で「真理」「真実」を意味するため、基本に立ち返ると見ることもできる。

データは毎日250京バイトで増えていると言われるが、「真実がわかれば分析したり、重要な意思決定を支援したりできる。データは企業の競争優位性に役立てることができ、顧客の理解や連携も深まる」とColeman氏。しかし、データの増加、IaaSやSaaSと新しいアーキテクチャや消費モデルの台頭により、複雑性は増す一方だ。

「IT業界はこれまで技術が中心だったが、今、パワーを持っているのは技術ではなく情報。技術から情報にフォーカスを移すべき」と会場に呼びかけた。

Veritasのアプローチは「プラットフォーム」だ。キーワードは、オンプレミスを含むマルチクラウド、データの可視化、データアナリティクスやAIなどのインテリジェンスであり、「すべてを備えているのはVeritasだけ」であり、これはポイントソリューションにとどまる競合との大きな差別化になると、Coleman氏は訴える。

Veritas Technologies CEO Bill Coleman氏

新生Veritasが打ち立てた戦略は進んでいる。Coleman氏は1年前のVeritas Visionの後、7つの新製品を統合した「360 Data Management Platform」を2016年末に発表、5月に提供を開始したことを報告した。クラウドでは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Google、IBMなど主要なクラウド事業者と提携を交わしている。

バックアップに強かったVeritasだが、マルチクラウド時代に合わせてデータ管理の戦略「360度データ管理」を打ち出している

マルチクラウドでMicrosoftと提携を強化

この日、VeritasはMicrosoftと2月に結んだ提携をさらに強化し、Veritasの戦略「360度データ管理」をAzureでサポートすることを発表している。「360度データ管理」を実現するソリューションには、Veritasのソフトウェア定義ストレージ(SDS)「Veritas Access」、データ可視化「Veritas Information Map」、事業継続の「Veritas Resiliency Platform」などを含み、これらをAzure上で動かしたり連携したりといったことが可能になる。

ゲストとして登壇したMicrosoft AzureのCTOであるMark Russinovich氏は、「VeritasとMicrosoftは25年の関係で共同顧客も多い」としながら、「大企業にとっては、歴史がありニーズをよく知る技術企業が必要」と述べた。

両社の協業はハイブリッドクラウドを推進する上で大きな加勢となり、「『既存技術を使ってできるだけ高速にクラウドを活用したい』という顧客のニーズに応えることができる」と説明した。共同マーケティングなども行っていくという。

MicrosoftでWindows Azure担当CTOを務めるMark Russinovich氏。ハイブリッドクラウドではオープンソース技術を活用しており「Microsoftはオープンソース企業だ」とも

セカンダリデータの活用を

続いて登場したのは、エグゼクティブバイスプレジデント兼最高製品責任者(CPO)のMike Palmer氏だ。同氏はColeman氏のビジョンを具体的な製品戦略に落とし込む重要な存在となる。

VeritasのCPOを務めるMike Palmer氏。同社のプラットフォームを、1台でショッピング、決済、電話と何でもできるスマートフォンにたとえた

Palmer氏はColeman氏の「情報のパワー」を、セカンダリ上にあるデータとして次のように説明した。「企業、顧客、アプリケーションとすべての歴史が1カ所にある場所。これを活用できる」、そして利用されていない資産を活用するという新しいモデル(シェアリングエコノミー)でホテルやタクシー業界を崩壊しているAirbnbやUberを紹介した。

さらに、Palmer氏は「Veritasはセカンダリデータを将来に向けて活用することを支援できる」と訴えた。

データ保護の要件は変化している。「仮想、物理、クラウドのデータをサポートしなければならない。しかも、各データの種類に最適な形で行う必要がある。また、コストとリスクを管理し、開発プロセスを高速化するためにコピーデータを管理する機能も備える必要がある」とPalmer氏。

これはほんの一例で、クラウド事業者のスナップショット技術の活用、コンテナ化されたアプリケーションのサポート、クラウドとの接続、NoSQLワークロードの自動検出や保護、ゼロダウンタイムでのバックアップと復旧、など、次々と挙げた。

これらのニーズを満たすため、多くの大企業は4~5種類のデータ保護技術を導入している。だが「プラットフォームが1つあればよい」とPalmer氏は述べ、「NetBackup 8.1」を発表した。数ある特徴の中でPalmer氏が強調するのが、クラウドバックアップだ。「重複排除は競合より3倍高速」とPalmer氏。この技術は「NetBackup Cloud Catalyst」と呼ばれている。クラウドと接続するコネクタについても、検証済みのものを約20種類そろえたと胸を張る。

競合と比較した図。Palmer氏はすべての要件を備えるのはVeritasだけと強調した

Veritasは合わせて、アプライアンスの上位製品となる「NetBackup 5340 Appliance」も発表している。5四半期連続でシェアを増やすなど好調で、競合よりも61%高速というスループットや性能を強調した。なおPalmer氏は”クラウドにあれば安心”と思っている企業が多い傾向も指摘した。そして、各クラウド事業者は契約の細かな注意事項としてクラウド事業者はデータに責任を持たないと明記しているとして、「自分たちのデータは自分たちで守る必要がある」と釘を刺した。

クラウドではまた、マルチクラウド環境向けのスナップショットベースのバックアップ「Veritas CloudPoint」を一般公開にしたことも発表した。CloudPointは無料でダウンロードできる。

今後はユーザーインタフェースやAIに期待

今後の機能強化としては、ユーザーインタフェースとAI/アナリティクスを紹介した。中でもAIとアナリティクスでは、自動での最適化、分析、修復、問題解決などを実現することで、セカンダリ環境にあるデータの統合や活用をさらに強化できる、とした。

バックアップの成功率改善にあたって失敗の原因を自動的に分析するような取り組みを例として紹介、2018年以降、何らかの機能を実験的扱いながら利用できるようにしていくという。