東京工業大学(東工大)は9月5日、40億年前の火星が地球と同程度の約0.5気圧以上の厚い大気に覆われていたことを突き止めたと発表した。

同成果は、東京工業大学地球生命研究所 黒川宏之研究員、千葉工業大学惑星探査研究センター 黒澤耕介研究員らの研究グループによるもので、8月24日付の欧州科学誌「Icarus」オンライン版に掲載された。

これまでの研究で、火星はかつて温暖で液体の水が存在した時期があった可能性が指摘されてきた。火星を温暖に保つためには厚い大気の温室効果が必要であるが、現在の火星は0.006気圧の薄い大気しか持っていない。

同研究グループは過去の研究で、火星誕生から4億年のあいだに50%以上の水が宇宙空間へ流出したことを突き止めていたが、火星がいつ、どのように厚い大気を失ったのかはわかっていなかった。

火星大気が宇宙空間に流出する過程においては軽い同位体が優先的に失われるため、大気への重い同位体の濃集として記録される。そこで今回の研究では、この濃集度が大気圧に依存することに着目。40億年前の火星隕石に記録されていた当時の窒素や希ガスといった大気に選択的に含まれる元素の同位体組成と、理論計算を比較することで、当時の大気圧を推定した。

この結果、40億年前の火星の大気圧は地球と同程度の約0.5気圧以上の厚い大気に覆われていたことが明らかになった。同研究グループは、今回の成果について、火星の固有磁場消失に伴う大規模な大気の宇宙空間への流出など、40億年前以降に起きた環境変動が地球と火星の大気の厚さの違いを生んだことを示唆したものであると説明している。

横軸:火星誕生からの時間、縦軸:大気圧、棒グラフ:現在の大気圧および今回の研究で明らかとなった40億年前の大気圧、点線:大気圧の時間変化(予想)。矢印:過去の研究の推定値 (出所:東工大Webサイト)

今後、NASAやJAXAによる探査を通じて、今回の研究で明らかとなった40億年前の厚い大気が失われた原因を解明できる可能性があるという。