最後に「DMMバヌーシー」というサービスに対する思い尋ねた。

「一口馬主は、正式には『馬主(うまぬし)』ではないんです。馬主の定義は個人馬主と法人馬主なのです。だからサービス名でも馬主とは使えない。そこで何かないかなと考えて検索していたら、モロッコのマラソン選手で、世界記録を3回も更新したハーリド・ハヌーシ選手を見つけた。彼のようにスターになってほしい、マラソンのような長距離最速になって、ダービーや菊花賞を勝って欲しいという思いから、ハヌーシと馬をかけてバヌーシーにしたんです」

インタビュー中、「バヌーシーは馬主と違って、感動をみんなで分かち合えることが価値」と野本氏は何度も力説していたが、その感動を分かち合うDMMバヌーシーの会員数は100万人をターゲットに据えていると話す。

「1頭ごとのバヌーシーは1万人しかいないかもしれないけど、プロ野球チームのように100万人の会員がバヌーシーの馬を応援する、そういった体験をみんなで実現したい。それは、当歳馬から見守ってきた可愛い可愛い馬だからこそ、実現できるものだと思っています」(野本氏)

競馬育成ゲームとリアルの結びつき

野本氏はインタビュー後、競馬育成ゲームと比較して価値について説いた。スマートフォンのサービスは月額数百円のサブスクリプションモデルや、ガチャ課金などさまざまな課金形態があるが、仮に1万円を出資したとして、これらの課金総額と大差ないというものだ。

DMMバヌーシーの競走馬の生活は、2歳後半から4歳、5歳まで、当歳から出資していれば5年程度楽しめるコンテンツになる。1万円の投資で5年間、年単位2000円で1頭の競走馬の現役生活を追い続け、追加の投資なく、場合によってはリターンも得られる。エンターテインメントとして楽しめることも加味すれば、よりフランクに競馬に接することができるわけだ。

もちろん、ギャンブルとしての側面が競馬にはあることを忘れてはならないが、野本氏は競馬産業に対して誠実に向き合い、バヌーシーのサービス化にこぎ着けた。「感動のシェア」は、馬が持つ「動物」としての親しみと、その成長と血統が織り成す「ドラマ」があるからこそ生まれる。疑似体験でしかなかった既存のゲームからリアルへ昇華することで、その感動の価値はより大きなものとなるはずだ。

野本氏が前回の記事で語った「DMMバヌーシーのダービー馬誕生」という結果にたどり着くことが、競馬界における「感動の総量」の最大化に繋がるのではないか。そう感じたインタビューだった。