秋田県立大学、筑波大学および農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究グループは、セシウムの吸収を大幅に低減できるイネの開発に成功したことを発表した。同研究成果は「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載された。
福島第一原発事故以来、放射性セシウムの作物への移行阻止は日本の喫緊の課題となっている。これまで、セシウムと、植物の重要な栄養分であるカリウムは性質がよく似ているため、植物はカリウムの輸送経路を通してセシウムを吸収していると考えられてきた。しかし、植物のカリウムの吸収経路は数多く存在し、どの経路によってセシウムが取り込まれているのかはわかっていなかった。
秋田県立大学生物資源科学部の頼泰樹助教らの研究グループは、突然変異を誘発させた10000個体近くのイネ変異体(遺伝子組換えでない)を栽培した結果、その中に極端にセシウムを吸わない個体があることを発見した。この個体の遺伝子解析の結果から、カリウム輸送体のひとつ(OsHAK1)が、イネの根が土壌からセシウムを吸収するときの最も重要な輸送経路であることが明らかになった。
この遺伝子の機能を失ったイネは根からセシウムを大幅に吸収しなくなり、現地圃場での栽培試験の結果、玄米についても放射性セシウム濃度が親品種(あきたこまち)の10%以下となった。開花期の若干の遅れなどの影響もみられるが、収量については現在までの栽培試験で親品種とほぼ同等に維持されているという。
今回得られた成果は今後、米への放射性セシウムの吸収抑制策として活用されることが期待されるという。