東北大学などは7月4日、超伝導材料や電池材料として知られているスピネル型酸化物LiTi2O4の表面について、その原子配列と電子状態を解明することに成功したと発表した。
同成果は、東北大学材料科学高等研究所 岡田佳憲助教、一杉太郎連携教授(東京工業大学物質理工学院教授)、東京大学 安藤康伸助教(研究当時、現・産業技術総合研究所研究員)、渡邉聡教授らのグループによるもので、7月3日付の英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。
LiTi2O4はスピネル構造の金属酸化物としては唯一の超伝導体で、13Kという比較的高い超伝導転移温度を示す。しかし、原子レベルで平坦な試料を作ることが難しく、表面における超伝導状態は、原子スケール分解能では調べられていなかった。
また、LiTi2O4は、リチウムイオン電池材料の候補としても知られている。リチウムイオン電池では、電極表面の原子配列が性能に極めて大きな影響を与えるが、金属酸化物電極表面の原子配列は未解明で、さらなる性能向上に向けて原子レベルでの理解が必要であった。
同研究グループは今回、高品質なLiTi2O4薄膜を作製し、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて表面の原子配列を調べ、コンピュータシミュレーション結果と比較した。この結果、最表面にチタン原子が周期的に並んでいることや、表面の超伝導性が固体内部とは異なっていることが明らかになった。
3つの元素からなるスピネル構造について原子像観察と構造決定、電子状態評価に成功したのは今回の研究がはじめてとなる。この系ではチタンの電子同士の強い相互作用が考えられるため、今後はナノスケールで起きる物理についても調べていく予定だという。