東北大学は、同大学大学院生命科学研究科の菅野明准教授らの研究グループが、農研機構の浦上敦子ユニット長、松尾哲主任研究員、香川県農業試験場の池内隆夫主席研究員、森充隆主席研究員、村上恭子主席研究員、九州大学大学院農学研究院の尾崎行生准教授、九州大学熱帯農学研究センターの松元賢准教授との共同研究により、茎枯病感受性の食用アスパラガスと茎枯病抵抗性を有する近縁野生種ハマタマボウキを用いて、茎枯病菌感染によって遺伝子発現が誘導される遺伝子群を網羅的に解析することで、茎枯病抵抗性に関わる遺伝子群を特定したことを発表した。この研究成果は1日、国際科学雑誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。
アスパラガス茎枯病は、西南暖地の露地産地を壊滅状態に追い込んだ難防除病害であり、食用アスパラガスには茎枯病抵抗性の品種がなく、現在 は薬剤防除に頼っているが完全に発病を防ぐのは非常に困難となっている。一方で、食用アスパラガスの近縁種であるハマタマボウキが近年、茎枯病抵抗性を有することがわかり、食用アスパラガスに茎枯病抵抗性を付与する研究が進んでいる。
この研究では、茎枯病菌感染によって発現が誘導される遺伝子群を食用アスパラガスとハマタマボウキとで網羅的に比較解析し、ハマタマボウキの茎枯病抵抗性に関与すると考えられる遺伝子群の特定を試みた。その結果、茎枯病菌感染によって発現誘導される遺伝子として1027個が特定され、そのうち515がハマタマボウキ特異的、352が食用アスパラガス特異的、残りの160が両種で共通に発現が誘導されることがわかった。ハマタマボウキで顕著に発現誘導が見られた遺伝子には、耐病性に関わる peroxidase 4(ペルオキシダーゼ 4)遺伝子や、chitinase-6(キチナーゼ 6)遺伝子などがあった。
この成果により、アスパラガス茎枯病抵抗性の分子機構の解明、および茎枯病抵抗性品種作出に用いる抵抗性選抜マーカーの開発につながることが期待されるという。アスパラガスで茎枯病抵抗性品種が育成できれば、西南暖地での露地栽培が可能になるだけでなく、殺菌剤の散布回数を大幅に減らすことができるため、国産アスパラガスの生産コストと生産労力を劇的に削減できると説明している。