新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と早稲田大学、エネルギー総合工学研究所は、発電量の予測情報に基づく制御技術を用いた圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES:Compressed Air Energy Storage)システムの実証試験を開始した。
CAESシステムは、天候により出力が変動する風力発電を電力系統上で安定的に利用するためのエネルギー貯蔵システム。同実証試験は、静岡県賀茂郡河津町に完成させた施設を東京電力ホールディングス東伊豆風力発電所と接続させて行われる。現在、導入拡大が進められている風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、天候によって出力が大きく変動し、電力の安定供給に悪影響を及ぼすことがあるため、出力の予測技術や制御技術を開発することが必要とされている。同システムの新しい制御技術と設備を実証することで、蓄電システムの制御技術を確立し、再生可能エネルギーの導入拡大に資することを目指すということだ。
CAESシステムの制御技術については、風力発電の予測情報に基づく変動緩和制御と計画発電制御の2つの制御技術が開発されている。変動緩和制御とは、電力系統に対する風力発電の出力変動を緩和するために同システムの充放電を制御する技術。計画発電制御は、事前に用意した発電計画と実際の発電量との差を極小化するために、CAESシステムの充放電を制御する技術となる。
同システムの設備は、空気を利用して充放電を行い、具体的には、風力発電から得た電力を使って圧縮機(モーター)で空気を圧縮、高圧状態で貯蔵。そして、電力が必要な際に、貯蔵した圧縮空気で膨張機(発電機)を回転させ、電力を発生させる。今回完成させた設備は、オイルフリー式スクリュータイプの圧縮機と膨張機を採用し、設備を汎用機器で構成することにより信頼性を高め、また、希少金属や有害物質を使用せず、空気と水しか排出しないクリーンなシステムとなる。さらに、圧縮の際に発生する熱も貯蔵し、放電時に再利用することで充放電効率を向上させているということだ。
なお、今回のNEDOプロジェクトでは、早稲田大学がCAESシステムの制御技術の開発、エネルギー総合工学研究所が設備構築を担当し、神戸製鋼所は、エネルギー総合工学研究所より外注を受け、機器の設計や製造を行っている。