慶應義塾大学(慶大)は4月6日、ヒト胎盤形成における細胞融合に関与するタンパク質であるシンシチン1の部分ペプチド(膜融合ペプチド)が、従来の細胞膜透過性ペプチドによるタンパク質の細胞質への送達効率を数十倍向上させることを発見したと発表した。

同成果は、慶應義塾大学理工学部 土居信英教授らの研究グループによるもので、4月4日付けの国際科学誌「Journal of Controlled Release」オンライン版に掲載された。

抗体やペプチド、核酸などのバイオ医薬品は、従来の化学合成医薬品と比べて副作用の恐れが少なく治療効果が高い分子標的薬として注目されているが、細胞膜透過性が低いという課題があった。

同研究グループはこれまでに、ウニの受精に関与するバインディンというタンパク質の部分ペプチドが、融合したタンパク質や共添加した抗体、酵素、核酸などの高分子の細胞内送達を促進できることを発見していた。しかし、これらのペプチドはヒト由来ではないため、医薬品に応用する場合は免疫原性の懸念があった。

今回の研究では、ヒトの受精に関与することが知られていたIZUMO1およびヒト胎盤形成における細胞融合に関与するシンシチン1というタンパク質のなかから、人工的な膜透過促進ペプチドとして機能し得る部分ペプチドを探索した。

この結果、シンシチン1の19アミノ酸残基のペプチド(S19)を発見。細胞膜透過性ペプチド(CPP)であるTATとともに蛍光タンパク質eGFPに融合し、タンパク質を大腸菌で大量発現・精製してヒト培養細胞に添加したところ、高い取り込みが観察された。細胞質送達の効率は数十倍向上していたという。さらにS19の効果は、さまざまなヒト培養細胞に対して、eGFP以外のタンパク質を融合した場合にも観察されている。

同研究グループは、今回発見したヒト由来FPであるS19について、バイオ医薬品を従来よりも効率よく細胞質に運ぶことが期待できるとともに、免疫原性の懸念が少ないという利点もあると説明している。

細胞膜透過性ペプチド(CPP)および膜融合ペプチド(FP)によるタンパク質の細胞質送達 (出所:慶大Webサイト)