“オフィスに足りないもの”を補う商品を展開

東京都では震災後、東京都帰宅困難者対策の条例を定めている。その中で、事業者に対し、従業員向けの3日分の水、食料等の備蓄を推奨している。

「今、備蓄を持っている企業が多ですが、保管場所がないから増やせないということもあるでしょう。そういう時に、足りない部分を補うという発想です。」発災時に倉庫まで取りに行くことが困難なこともあるだろう。そういう時でも、キングジムの防災関連商品はいずれも、A4ファイル大のケースに入っているのでオフィスの棚に書類と一緒に置くことができる。追加のスペースを作る必要性が低いのが利点だという。

オフィスに追加のスペースを作る必要がなく、A4 ファイルと一緒に収納できるし、誰のものなのか記入できるので、管理もしやすいお道具箱感覚だ

なぜこのような、文具とは程遠い防災関連商品を出しているのか。

A4サイズがポイント

「うちは元々、オフィス環境を改善するための用品というジャンルでエアコンの風を拡散する装置や、デスク周りの商品も開発していました。オフィスで足りていないものはなんだろうと。そういった発想から今回の防災関連商品は、生まれたのです。」と宮崎さん。

防災関連の商品が、A4サイズのケースに入っている訳。それは、同社の主力商品であり、国内シェア1位の「キングファイル」シリーズの売れ筋がA4サイズ。棚をA4サイズに合わせているオフィスが多いであろうことからなのだという。

とはいえ、同社が持っている自社工場は、ファイルを製造する工場のみ。それ以外の商品については、その商品についての技術、知見などを持った企業に協力してもらい、製造を依頼。今回のセットでは、A4の箱のみ自社製造で、中身の食品などは協力企業から買い集めたものだという。「うちの開発部署は、商品企画という趣きが強いです。アイデアを出して、ディレクションする人というイメージ。工場がないからこそ、幅広い商品が出せるのです」と宮崎さん。“A4”“オフィス”というキーワードで防災関連の商品に行き着いたのだ。企業の防災意識の高まりもあり、売れ行きは好評だという。

今後の同ジャンルの商品の展開はまだわからないというが、A4サイズの災害時の支援セットや、ポメラなど、全く思いもつかない、商品を出し続けるキングジム。まだ見ぬ“オフィスに足りないもの”は世に出るのか。今後の商品展開がますます注目される。